【花まるコラム】『おもしろいからもっと知りたい』加藤崇浩

【花まるコラム】『おもしろいからもっと知りたい』加藤崇浩

 花まるに通っていらっしゃる方であれば幾度となく聞いたことがある、4~9歳が「赤いハコ」・11~18歳が「青いハコ」という考え方。本コラムでは花まるグループの進学塾部門である「スクールFC」「西郡学習道場」のスタッフより、青いハコの子どもたちのお話をお届けします。今回は、社会にまつわる子どもたちの成長の事例をご紹介します。

 4年生総合コース社会の授業、1学期は47都道府県の形や地形、特産物、工業などをカルタにまとめた『都道府県カルタ』を扱います。カルタにすることで、遊ぶように知識を増やしていけます。
 新学年の授業がスタートした2月、九州地方を扱った初回の授業での出来事。カルタの読み札である宮崎県の『促成栽培きゅうりとピーマン』や長崎県の『真珠の養殖大村湾』などの解説をしていると、Aくんが「先生!佐賀県は日本一のものはないの?」と質問してきました。「『のりの養殖有明海』ってカルタの読み札があるでしょ?佐賀県は、実はのりの養殖で日本一だよ」と伝えると、さらに「へえ~、どの県にも必ず日本一があるのかな?」聞いてきました。「そうだねぇ…、『必ず』かどうかはわからないけれど、調べてみるときっとおもしろいよ!」と返しました。
 次の週。Aくんは教室に入るなり、「先生!九州の日本一調べてきたよ!」と、テキストにびっしり書き込まれている「日本一」を見せてくれました。そこには、熊本県「スイカの生産日本一」、大分県「温泉の源泉数日本一」などの有名どころから、福岡県「かいわれ大根の生産日本一」、鹿児島県「オクラの生産日本一」などのマニアックなものまであり、相当の時間をかけて調べたとすぐにわかりました。「Aくん、こんなにたくさん調べてきたんだね!」と声をかけました。するとAくん、「九州の県は全部日本一があった!調べてたらおもしろくなってきて、テキストにないものをたくさん書いた!」と、弾けるような笑顔で応えてくれました。
 授業は進んで5月、埼玉県を含む関東地方を扱ったときのことです。Aくんの「日本一探し」は相変わらず続いていました。Aくんの様子はクラスのみんなが知るところでしたが、ここまで調べ続けているのはAくんだけでした。そんななか、埼玉県の『ねぎ・ほうれんそうは日本2位』という読み札に、「先生~!埼玉、千葉に負けてるじゃん!」と、クラスの全員が反応しました。そう、千葉はねぎ・ほうれんそうの生産が日本一なのです。この子どもたちの反応を見て、私は瞬間的にチャンスだと思いました。「埼玉と千葉は長年ライバル関係にあるけれど、みんなの住む埼玉は、ねぎ・ほうれんそうの生産では残念ながら2位、千葉がずっと1位なんだ。でもね、安心して!埼玉はなんと、小松菜の生産が1位だよ!」と言うと、子どもたちは「ほかにも日本一ないの~!?」と大合唱。続けざまに、「埼玉はくわいの生産も日本一だぞ!すごいよね!」と自信満々で伝えると、「ほかにはほかには?」「くわいって何!?」と大騒ぎ。しめしめ、私の描いたシナリオどおりです。ここで子どもたちにこう言いました。「みんなの住んでいる埼玉県、きっとほかにも日本一がたくさんあるはず!来週の授業までに、『埼玉の日本一』をたくさん調べてきてね!」と伝えました。
 その翌週。授業開始の30分前に一番乗りで走ってきたのはBくんでした。Bくんは、ここまで日本一探しはせず、淡々と授業を受けていた子です。授業もここまで早く来たことはありませんでした。Bくんは開口一番、「先生!埼玉県の日本一、たくさん調べてきた!!」と言って、私にテキストを見せてくれました。そこには、前週の授業で私が伝えた小松菜・くわいはもちろん、「アイスクリーム生産額日本一」「医薬品生産日本一」「中華麺生産日本一」など、農産物に限らず「埼玉の日本一」がびっしりと書き込まれていました。Bくんに「先生も知らないものがたくさんあるな~!Bくん、頑張ったね!」と言うと、「うん、お父さんもお母さんも埼玉出身だから、埼玉の日本一があったらいいなと思って、お父さんと一緒に調べたんだ~。ほかにもあるかも~」と答えてくれました。その表情は、飄々としつつもどこか嬉しそうでした。
 その日を境に、BくんもAくんと同じように、「日本一探し」を始めました。お互いが何を調べてきたかを見せ合うこともありました。二人はその後、私立中学受験と公立中高一貫校受検と進む道は分かれましたが、5・6年生になっても二人の「社会好き」は変わらず、二人の受験(受検)の大きなあと押しになってくれました。

 新しいことを知るからおもしろい、おもしろいからもっと知りたい。そこには「楽しい」という気持ちがあります。社会だけでなく、国語・算数・理科、どの教科にも学問としてのおもしろさと奥深さがあります。それを子どもたちに伝えることに、スクールFCのスタッフは日々さまざまな工夫をしています。

スクールFC 加藤崇浩(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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