【花まるコラム】『優しさの連鎖』加藤美耶乃

【花まるコラム】『優しさの連鎖』加藤美耶乃

 2年生のUくんは、いつも前向きな発言で教室を盛り上げています。たとえば、レベルの高い問題を見たときに「難しいからこそおもしろいんだよね!」と言ってまわりの子の士気を高めたり、ほかの子の解答が惜しかったときに「どんまい!そういうこともあるよね!」と励ましたり。それも無理して言っているのではなく、Uくんはそのような前向きな言葉を使うこと自体を楽しんでいるのです。
 9月末、小学生クラスでは算数大会という特別授業を行いました。算数の内容、算数のコンテンツを用いたさまざまなゲームを行う授業で、9月は長さの単位や積み木、図形を使って遊びました。大会にはチーム優勝や個人MVP賞があり、毎回子どもたちは「今回は優勝するぞ!」「MVPを取るんだ!」と意気込んで教室に入ってきます。Uくんはこの算数大会でも、一つひとつのゲームで「何それ!おもしろそう!」と盛り上げたり、ほかのチームに向けて「頑張れ!」と小躍りをしながら応援したりして、存分にリーダーシップを発揮していました。
 最後のMVP発表でUくんのチームから選ばれたのは、考えることを諦めずに問題に向き合い続けた1年生のFくんでした。MVPが発表されたとき、UくんはFくんに体を向けて「おめでとう!」と拍手を送っていました。
 後日、Fくんのお母さまから以下のようなメールをいただきました。

 算数大会ではMVPをもらえてとても喜んでいました。そのときに同じグループの年上の子が「おめでとう」と言ってくれたと聞きました。「ほかの人がMVPを取っていたら自分だったら悔しくておめでとうって言えないなぁ。お友達にそんな素敵なことが言えるなんて…嬉しいね、自分も言えるようになったら素敵だね」と親子で話しながら嬉しくなりました。

 翌週の授業の際、私からUくんに「Fがおめでとうって言ってもらえて嬉しかったんだって。Uみたいな人になりたいって思ったんだって!」と伝えました。するとUくんは照れ臭そうに「おぉ、それは嬉しいなぁ…」と言いながら、その言葉をかみしめるように小さく頷いていました。私が「どうしてお友達に優しくできるの?」と聞くと、当たり前だと言わんばかりに首をかしげたUくん。さらに私が少し意地悪で「だって友達に優しくしなくても、自分は困らないでしょう?」と聞くと、Uくんは「確かに…」と考え出します。しばらく悩んだ末に出した答えは、「友達の笑顔が見たいから」というものでした。

 友達の笑顔が見たいがゆえに人に優しくできるUくんと、そのUくんに優しさをもらったことで“自分もこんな人になりたい”という目標を持つことができたFくん。2人のこの先の人生が楽しみで仕方がありません。  

花まる学習会 加藤美耶乃(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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