【花まるコラム】『子どもの感性』右田優羽

【花まるコラム】『子どもの感性』右田優羽

 小学生の授業では1年生の夏から毎週の作文書きが始まります。花まる学習会の作文は、「作文を書く楽しさ」を実感し、自分の言葉を持てるようになることが目的です。作文には、テーマを自分で決めて自由に書く『じゆうさくぶん』と、お題にそって書く『かだいさくぶん』があります。『じゆうさくぶん』では、子どもたちに「思ったこと、感じたこと、体験したこと、将来のことなんでも自由に書いてね」と伝えています。だからこそ、自分が書きたいと思ったことを素直に楽しく書く子どもたちの姿がたくさんあります。
 教室に入ってきてすぐに「今日はこれを書くんだ!」と書く内容が決まっている子もいれば、「今日は何を書こうかなぁ」と考えている子などさまざまです。ここで子どもたちが実際に書いた作文を紹介したいと思います。

「トイレから音がしました。トイレにオバケがいるかもしれないです。」(1年生男子)
「魚は水のなかで呼吸ができるのに、なぜ人は水のなかで呼吸ができないのでしょう。不思議です。」(2年生女子)
「耳の穴のなかはどうなっているのかな。宇宙になっているのかな。」(3年生の女子)

 ほかにも紹介しきれないほど、想像力豊かな作文がたくさんあります。子どもならではの感性や視点がこれらの作文を生み出しているのです。トイレから音がしても「オバケがいるかもしれない」と思うよりも、「何か物が落ちたのかなと」と気になる方が多いのではないのでしょうか。また耳の穴のなかに宇宙が広がっていると想像することもなかなかないと思います。それは耳のなかの構造(鼓膜や蝸牛があるなど)を知っているからです。大人になるといままでの経験や勉強量から、自然と知識が増えていきます。大人にとっては当たり前のことでも、子どもたちからすれば未知の領域でとても不思議なことなのです。だからこそユニークな視点で物事をとらえ、おもしろい考えになるのですね。

 この作文を書いている子どもたちも、成長して大人になっていきます。いま不思議に思っていることでも、調べて答えを知り自分の知識として蓄えます。もちろん調べること、知識が増えることは悪いことではありません。むしろ良いことです。一方で、いましか持っていない視点で書ける作文だと考えると、幼児期に書いているのは大人になったら書くことのできない貴重な作文です。

 だからこそ子どもたちが「書きたい!」と思うものを楽しく書いてほしいという思いを込めて、花まる学習会では作文を行っています。自分が書きたいと思ったことを好きなだけ文章にすることが、子どもたちの「作文を書きたい!」という気持ちにつながります。とは言っても、「短い作文しか書けない」「いつも同じ内容ばかり」など思うこともあると思います。しかし、子どもたちが何より嬉しいのは、自分が素直に書いた作文を大好きなお母さんお父さんに認めてもらえるということ。心からの一言が子どもたちの自信につながります。

 彼らの作文からは「こういうことを不思議に思うのか」「こんなことを考えているのか」と驚かされることが多くあります。子どもたちの視点から学ぶことも数多くあります。いましか書けない子どもならではの視点を楽しんでみてください。そして「おもしろい作文だね」「学校でこんなことがあったのね!よく書けているね!」など、お子さまにお伝えいただけますと幸いです。

花まる学習会 右田優羽(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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