0〜3歳の親子が集まって、創作ワークショップが開かれた日。その日のテーマは「毛糸」でした。1色につき20本ほどの毛糸の束が何色も集まった箱のなかは、色とりどりでとても綺麗。ファシリテーターがその日に作る作品の紹介や創作のグランドルールを伝えたあとは、早速親子の創作の時間が始まります。
創作の時間になると、子どもたちはお母さん、お父さんたちと一緒に創作を楽しむ… 。
なんてことは、なく。
感じるままに毛糸で遊び始めます。箱のなかから毛糸を出したり、毛糸が入った箱ごと運んだりと、毛糸への反応は子どもたちそれぞれ。もちろん、親とともに創作を楽しむ子もいます。
小さな頃からお母さんと一緒にワークショップに参加をしていた2歳の女の子は、創作中のお母さんのお膝の上にちょこんと座っていました。彼女のまわりには、先ほど箱から持ってきたカラフルな毛糸が落ちていました。でも、彼女の目線はそこにはなく、どこか遠くを見ていました。
彼女は毛糸に心惹かれなかったのでしょうか。
いいえ、よくよく見ると目線は遠くを見ていても、彼女の手には一本の毛糸が。その毛糸を指先でつまむように上から下に手を動かしています。何度も何度も、毛糸の感触を確かめるように。
体はお母さんの温もりを感じながら、目線は毛糸から外し、ただただ指先で感じる毛糸に夢中になる。パッと見ただけでは見逃してしまいそうでしたが、よくよく観察してみると彼女の毛糸の楽しみ方がそこにはありました。
花まるおやこクラスを通して0歳・1歳の子どもたちと過ごすなかで、その日の素材に興味がなさそうに見えても、よく観察してみると実は夢中になっていたという場面とよく出合います。
直接手や口で素材の感触を楽しむ子、物を使って素材の動きを楽しむ子がいるなかで、素材から一定の距離を取りながらじっと目で観察する子もいます。
そして、これはおもしろい!と発見したのが「親を介して素材と出合う子がいる」ということでした。親と素材のかかわりを見ながら、音や様子を観察しているのです。水の音、粉が舞い落ちる光景、そしてある瞬間から手を伸ばし親の真似をしながら素材とかかわり合っていく。素材との出合い方は、こんなにも多様なのかと毎回驚かされます。
その子の「こうしたい」という感性は、教えなくてもその子のなかに存在し、素材とかかわるなかで磨かれていくのでしょう。
それは、大人もおなじ。
1つの素材をどう扱うか、親子でどう遊ぶのかは人それぞれ。親子で素材を楽しむ人もいれば、子どもの様子を観察している人もいる。大人の創作タイムには、同じ素材を使っても違った魅力をもった作品たちができあがります。
遊び方も作品の作り方も正解はありません。自分が感じたことを表現する。それは「自分の心地よい生き方」につながっていきます。安心して親も子も自分の感じ方を大切にできる。花まるおやこクラスがそうした場所になりますように。
花まる学習会 和田真理子(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。