特別授業「国語大会」で行った「ことばの階段」のゲーム。低学年でも高学年でも大いに盛り上がりました。「『あ』から始まる食べもの」など、お題に合わせて文字数を増やして重ねていくゲームです。あじ→あんこ→あめだま…のように。5文字の言葉ぐらいまではすぐ出てくるのですが、それ以上になると頭をひねらせないとなかなか難しい様子でした。高学年は、「『し』から始まる言葉」というお題に挑戦。さすが高学年というような語彙力で、次々と言葉を積み重ねていく子どもたち。10文字の「ショッピングセンター」まできたところで、「もう終わりかな…」と私が声を発すると、「まだいけます!いきます!終わらせないでください!」と鼻息荒く返答がありました。その熱意に応えて、続けてみることに。すると5年生の男子Sくんが叫んだのです。
「先生、12文字あった!!『し』こうりょくがとまらない!」
「もはや言葉をこえて、文章じゃないか!」
と思わずつっこみを入れてしまいましたが、そのワードセンスに私は高揚感を得ました。
「それってどんな状態なの?」
と聞いてみると、
「Sなぞとか考えているときのわくわく感とか、いま」
と返ってきました。
「し」のつく言葉って何があるかな?と考える。これは何文字かな?と指を折る。隣の子がふと発した声に「あ!」とひらめきを得る。
どの瞬間も、「どうすればできるだろう?」「こうやったらできるかな?」「あと少しなのに…!」を楽しんでいる。つまり、夢中になっている、没頭しているという状態でした。自分たちがそういう状態にあることを「思考力がとまらない!」と表現したセンスに、私は感動してしまいました。同時に、キャッチーなこのワードは高学年の子どもたちのハートをつかみ、翌月の思考実験大会でも、「今日のテーマは?」と聞いてみると、6年生のYくんから意気揚々と、この12文字が返ってきたのでした。まわりの子もにやり。そこから、答えをあてにいくのではなく、「自分の回答で友達をおもしろがらせる」「作問をする側にまわって、まわりを楽しませる」という思考実験大会が始まったのです。
「仕掛ける側にまわる」これが究極のマインドチェンジなのだと考えます。そうすると、自然とそのもの自体を楽しんでいる状態がうまれます。ひいては、それが自分の学びに還元してしまえるようになれば最高です。受動的ではなく、能動的になった瞬間、同じことをやっても学びは倍になると考えます。
いまの小学生が社会で活躍する2040年頃の世界はどうなっているのでしょうか。AIがいまより発達し、とって変わられる仕事が多いなかで、どんな力が求められるでしょうか。私としては、「信頼を積み重ねる力」「自分の得意や強みを知っていて、それを発揮できる力」「相手のいいところを認められる力」かと思っています。いっしょに過ごしていると楽しい、いっしょに仕事をすると新しいアイデアが湧いてくる、いっしょにいるだけでわくわくする、そんな人が、花まる学習会が目指す「メシが食える大人」「モテる人」なのだと考えています。人間力を磨いていく先に、明るい未来が待っているのではないでしょうか。
時々子どもたちから聞かれる、「どうして勉強(宿題)しなくちゃいけないの?」というという質問に、2040年を描いたときの、大人の私の考えを伝えられ、逆にあなたの考えも聞かせてと対話ができる人でありたいと思っています。
花まる学習会 加藤千尋(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。