【花まるコラム】『楽しさのなかで学ぶ』浦岡翠

【花まるコラム】『楽しさのなかで学ぶ』浦岡翠

 寒さのなかにも、少しずつ春のあたたかい日差しが感じられるようになったこの頃。すでに教室のなかでは上着を脱ぎ、半袖で授業を受けている子もいます。私が「寒くないの?」と聞くと、「全然!」と笑顔で答えます。子どもたちの元気いっぱいな姿を見ていると、なんだか私までポカポカしてきます。子どもたちって、そんな不思議なパワーで溢れていますね。子どもたちの秘めたパワーは元気以外にもたくさんあります。

 いつも私は授業の際、子どもたちの発想の豊かさに驚かされます。大人の思考は、いつの間にか現実的な発想に寄ってしまうものですが、子どもたちの頭のなかの世界は、ユニークなおもしろい発想で溢れています。また、花まるの子たちの素敵なところは、自分の考えを堂々と発表できるところです。そして、まわりの子の発表に「いいね、それ!」と拍手を送れるところも素晴らしいです。

 今回は、小学生低学年コースで大人気の教材「たこマン」への取り組みの様子から、子どもたちの世界を覗いてみていただければと思います。

 「たこマン」とは、お題となるイラスト見て、そのあとどんなおもしろい展開(オチ)になるかを自由に考えて発表する、発想力とプレゼンテーション能力を鍛える教材です。

 とある日の授業でのお題は「蛇口をひねろうとしている男の子」の絵でした。さて、そのお題に対する子どもたちのオチを紹介します。

 トップバッターは、Yくん。
「蛇口をひねると、目がドーン!と飛び出してくる!」
このオチは、あまり蛇口との関連性はありませんが、低学年の子どもたちが大好きなタイプのオチです。体の一部が飛び出したり、何かが爆発したり、『ドーン!』や『ドッカーン!』などの擬音語が使われるようなオチが出てくると、みんな大爆笑です。

 一人が発表し終わると、間髪入れずにほかの子たちが、「当ててくれ~!」と言わんばかりの熱い視線を私に向け、ピンと手を挙げます。

 次は、Rくん。
「蛇口と男の子の口が繋がっていて、蛇口をひねると男の子の口からボタボタボタ~って水が出た」
これは想像すると、クスッとしてしまいますね。『ボタボタボタ~』という音もおもしろさを際立たせていて、その音(言葉)選びにも感心しました。

 まだまだ止まりません。今度は、Tくん。
「蛇口が銃になって、戦いになった」
これは男の子が「なにそれサイコー!」「かっこいい!」と興奮するオチです。女の子は、「確かに銃に見えるね」と冷静に分析をします。この反応の違いもおもしろいですよね。『蛇口』の概念に縛られない、素敵な発想でした。

 次は女の子、Iちゃん。
「男の子の着ている水色の服の色が抜けて透明になった」
少し幻想的なオチですね。これぞまさにユニークな発想です。「おお~」と思わず声が漏れました。感動していたら、先ほどのTくんが、「透明になったら裸が見えて恥ずかしいじゃん…」と呟き、みんなからも「確かに…」と、納得の声が上がりました。

 このように、毎回ほとんどの子が自分なりのオチを発表します。たこマンでの子どもたちの常識にとらわれない自由な発想は、みんなをいかに笑わせようか、先生をいかに唸らせようか、というポジティブな思考です。この時間のみんなの表情や前向きな気持ちは、とても魅力的です。何歳になっても、いまのような豊かな発想力で、まわりを明るく照らしてほしいと思います。

 最後に、最近耳にした「楽しいだけが音楽じゃないけど、やっぱり楽しくなけりゃ音楽じゃないな」という言葉に私はひどく感銘を受けました。まさに花まるの授業だな…と。学びのなかには難しいことももちろんある。けれど、いつも前提に「楽しい」がある。花まるでの学習がそのような時間であるよう、努めてまいります。

花まる学習会 浦岡翠(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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