【花まるコラム】『どちらにも転がる』舟橋一夢

【花まるコラム】『どちらにも転がる』舟橋一夢

 花まる学習会 低学年コースの授業時間は90分で、これは一般的な小学校の一コマと比べると2倍の時間です。子どもたちの集中力に個々で波はありつつも、授業終了後は満足した様子で帰宅する子がほとんどです。授業前半では約3~5分を目途に、音読や立体ブロック・ 図形認識教材を使用した問題、素読、物語を聞いてクイズに答える課題、思わずみんなが笑ってしまうストーリ(オチ)を考える課題など、教材や教具の内容を短時間で変えていきます。動きのある時間もあれば、じっと静かに集中してテキストに取り組む時間もありますので、自然と気持ちの切り替えがおこなわれます。このサイクルが子どもたちの躍動を引き出しているのだと、授業中の子どもたちの様子を見て感じています。初めて低学年コースの授業をご覧になられた方は「こんなにテンポの早い授業をされるのですね」「いろいろなことをされていますね」と驚かれることも。
 子どもたちが生き生きと集中して取り組んでいる要因は、上記のような仕組みの面もありますが、「声かけ」にも重要な働きがあると思っています。たとえば、小学生クラスでは「サボテン」(計算教材)に取り組む時間があります。そのときの様子です。


※ゆっくり次の準備をしている子に対して
私: 今日の日付を書いたら、鉛筆を持って。今日もタイムを計るよ!
子どもたち:わ~先生、待って!すぐに準備をするから!
私: 新記録が出るかな?
子どもたち:先生、始めていいよ!はやく~!
私:よーい、ドン!


 子どもたちに対して「早くテキストを出して」と言ってもなかなかそうはいかない場面もあります。しかしながら、タイムを計るなど、まるで遊びのように競争を促す声かけをすると、途端にパッと準備をします。これと似た状況として、離席している子に「席に座りなさい」と伝えるのではなく「5・4・3・2・1」とカウントダウンをすると、目の前のことを止めてすぐに席に座ることもよくあります。授業中、静かに話を聞いてほしい場面で「みんな静かに!」と言っても、おしゃべりで盛り上がっている子にその声が届くことは少ないです。しかし「先生の動きを真似してみよう!」「最初はグー」などと聞いている子と楽しみはじめると、おしゃべりをしていた子もそれに気づいて真似をしはじめ、気づけば全員がこちらに注目している状態になります。成長が著しい時期の子たちにとって、真似をすることは心地よい時間なのだと思います。

 このように、「声かけ」一つで子どもたちの躍動を引き出すせるのだと、子どもたちの様子を見て感じています。反対に、子どもたちが作った作品に対して「何を作っているの?」と質問して何かであることを求めたり、課題に取り組む前に「この問題、難しいよね~」と言うことで難しく感じさせてしまったりして、子どもたちの自信ややる気を奪ってしまうケースもあります。子どもたちに投げかける言葉は、子どもたちの未来を良いほうにも悪いほうにも導く道具なのだと感じました。

 「言霊」という言葉が古代日本から伝わっていますが、その所以が普段の授業を通して、私の実感として腑に落ちています。

花まる学習会 舟橋一夢(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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