【花まるコラム】『成長の場所』野澤直紀

【花まるコラム】『成長の場所』野澤直紀

 「なんで、花まる学習会ってこんなに楽しいところなんだろう~。ずっと楽しいよ~」年長クラスの男の子が、授業終了5分前にひとりごとのようにそうつぶやきました。
 また、別の教室でも「え?もう授業終わり?夜までずっとやっていたいなぁ」そんな声が聞こえました。
 花まる学習会の教室では、こういった声を聞くことが少なくありません。私はそのたびに、本当に嬉しい気持ちになります。嬉しいという言葉では表しきれない、心が喜びで満たされていく、そんな気持ちになるのです。
 さらに、授業後にお母さま、お父さまからいただくメールからも、幸せを感じております。「『今日も楽しかった~!』と帰ってきました!」「家に帰るとすぐにテキストの続きをやっていました!」といったメールを見るたびに、この仕事をしていて良かった、心からそう思うのです。私は、花まるの教室、花まるの仕事が大好きです。

 そんな私の愛する花まる学習会は、週1回の教室だけではありません。子どもたちをメシが食える大人、魅力的な人に育てるために、花まる学習会は3つの柱を大切にしています。それは【思考力・国語力・野外体験】。そのうちの1つが野外体験です。夏にはサマースクール、冬には雪国スクールといった、生きる力を育むスクールが開催されます。昨年度の3月末に行われた雪国スクールでは、ここでしか経験することのできない、かけがえのない成長の瞬間がたくさんありました。

 2泊3日の雪遊びのコースに参加した小学3年生のYくん。私が担当したその班のなかでは最年長でした。「うちの子、本当に頼りないし、体力もないので…」引き継ぎのときにお母さまがそうおっしゃっていたのを鮮明に覚えています。確かにYくんは、初めはそうだったかもしれません。しかし、この雪国スクールの3日間でみるみる成長していきました。自分より年下の子が困っているのを見つけると、誰に何を言われたわけでもなく、走ってそこに行き「どうした!手伝うよ!」「俺がやるよ!」と声をかけていました。雪遊びをしているときには、班の中心になって、全員が楽しめるように気を遣いながら班をまとめようと必死に動く姿が見られました。

 どうしてYくんはこんなに変わることができたのか。その理由の1つに【環境】が挙げられます。親という頼れる人がいない環境。そんな場所で自分より年下の子が困っている、そして自分が頼られている、自分が頑張ることで喜んでくれる人がいる、そんな環境が子どもたちを変えるのです。
 その成長の瞬間を見ることができて、私は幸せでした。しかし、このときのYくんの姿をお母さんに見せられないことが心残りでもありました。

 その気持ちは、いい形で裏切られました。その知らせは野外体験参加後アンケートとして私のもとに届きました。

リーダーの〇〇さんへ
 今回のスクールでは大変お世話になりました。 Yは自信がついたようで、家での行動にも変化がありました。洋服ダンスのタオル、パンツ、靴下を箱に入れて整理してみたり、歩いて20分かかるお稽古場所に自分で歩いて行ったりしています。それもこれもリーダーのおかげだと思っています。 いままであまり頼りにされてこなかったYが、今回のグループでは少しお兄さん的な存在になったことと、リーダーが認めてくれたことが、自信につながったのだと思います。どうもありがとうございました。とてもいい出会いでした。家でも学校でもない、違う自分を見つけられたのも、花まるの野外体験だから。最高です!

 Yくんの成長は、スクール中だけのものではありませんでした。私は特別なことは何もしていません。すべてYくんが自ら行動した結果です。

 野外体験はもちろん、教室でも、このような成長につながる環境をたくさん作ってまいります。    

花まる学習会 野澤直紀(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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