【花まるコラム】『エンターテイナー』内海拓也

【花まるコラム】『エンターテイナー』内海拓也

 雪国スクールでは、小学生が参加するほとんどのコースで「お楽しみ会」を行います。子どもたちが主体となり、3分間で出し物をします。お笑いや劇、歌など、班によってその個性はさまざまです。一番の目的は「自分たちで楽しいことを作り上げ、その楽しみをみんなで共有すること」。子どもたちはどんな出し物にしようか考える段階からワクワクしており、自分たちで考えたからこそ、練習にも熱が入ります。私の参加したコースでは、全13班が出し物を披露しました。
 子どもたちは、自分の出し物だけでなく、ほかの班の発表も食いつくように見ています。教室長が授業で盛り上げるのとは違う、子どもたち同士の世界だからこその魅力が、そのような雰囲気を作りあげるのでしょう。そんなお楽しみ会で、その場にいるすべての人が見入ってしまう出し物がありました。

 それは、雪国スクールでしてはいけないことを、一人のヒーローが劇中でほかのメンバーの演技を止めながらユーモアたっぷりに伝えていくというもの。全員が引き込まれた最大の理由が、3年生のヒーロー役の女の子の振り切れた演技。「ちょーっと待ったー!!!」と全身を使いながら割り込む姿や、途中で落としたゴーグルを反対につけて「あらやだ、これじゃ恥ずかしくてお見せできないわ」といったユーモラスなセリフを、恥ずかしがらずに堂々と言っていたのです。そして、ほかのメンバーもその子に負けず劣らずの堂々とした演技だったからこそ、ヒーロー役が浮くことなく盛り上がりました。お楽しみ会が終わると、その劇のセリフをまねする人が続出。みんなに影響を与える演技でした。

 花まる学習会では、自分の考えたことを相手に端的に、魅力的に伝える力を「たこマン」という教材を通じて楽しみながら育んでいます。1コマ目の絵を見て、2コマ目のオチを考える教材ですが、ポイントは「短く・わかりやすく・おもしろく」。1年生は4月当初、なかなか端的にまとめられずに4コマ分くらいの長さになっていましたが、現在は堂々と短く伝えることができるようになってきました。やはり、みんなが注目するオチは、発表する子自身が恥ずかしがらずに、楽しそうに発表しているものです。
 学校では、全体発表の際にまわりの反応が気になって緊張することもあるかと思います。花まる学習会では、チーム内(少人数)での発表を経て全体での発表へ、と段階を踏みつつ、どんな発表でも受け入れる雰囲気を作っています。「この人の話っておもしろいな」「この人から言われるとわかりやすいな」と思ってもらえる存在を教室のメンバー全員で目指していきます。

 そんな“発表好き”が集まる教室ですが、先日6年生のMくんが「給食当番の子にもう少しカレーを多くよそってもらいたいが、どうお願いすればいいだろう」という特別授業のゲームのお題でこんな発表をしました。
「俺、実はカレーパンマンなんだ。だからカレーが大好き!(つぶらな瞳で見る)」
迷わず「いいよ」と言ってしまいそうなユーモアあふれる発表に、 教室中が笑いに包まれました。

 発表が楽しいと思える、そんな教室を作ってまいります。

花まる学習会 内海拓也(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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