【花まるコラム】『成長』早乙女優介

【花まるコラム】『成長』早乙女優介

 3月末に雪国スクールへ行ってきました。「野外体験」は花まる学習会の三本柱(あと二つは「思考力」と「国語力」)の一つです。大自然のなかで、はじめてのことにチャレンジし、喧嘩をしたり壁にぶつかったりしながらも仲間たちとともに楽しく過ごした2泊3日でした。
 私が参加したのは「スキーは、はじめて!」という子がほとんどのコースで、スキーブーツの履き方レクチャーからスタートしました。ただでさえ、もこもこのスキーウェアを着て厚手の手袋をした状態のため「できないよ〜!」「足が重いよ〜」と悪戦苦闘。ゲレンデに着いてからもしばらくは前向きになれずに、すぐペタッと雪の上に座りこんでしまう子もいました。
 しかし、30分ほど経つと一変、両手でしっかりとスキーの板を持ち、斜面を一歩一歩力強く登る姿がありました。宿までの帰り道に彼らに話を聞くと「足、痛かったんだけどそれよりも楽しかった!」「僕さ!誕生日プレゼント、スキー板にしたい!」「また明日滑れる!?」とみんな興奮気味に話していました。

 翌日、彼らは驚くほど成長していました。スキーブーツを自分で履けるようになり、なかには「手伝うよ!」と職人の顔つきでほかの子のサポートをする子もいました。「はやくスキーをやりたい!」という気持ちもあるでしょうが、それ以上に子どもたちの飲み込みの早さと、誰かに教えよう、誰かを助けようとする気持ちに驚きました。
 成長はスキーにかんしてだけではありませんでした。トイレでしゃがみ込む4年生のAくん。(何をしているんだろう…?)と覗いてみると、みんなが使ったスリッパを綺麗に揃えていたのです。誰に言われるでもなく当たり前のように行動できる彼はとても素敵でした。初日からほかの子たちに優しく接してきた彼だからこそ、みんなも見習ったのでしょう。次々にトイレのスリッパを揃える子が増えました。“何を学ぶか”以上に“誰に学ぶか”も人の成長に必要なひとつの要素なのかもしれません。
 そのほかにも、食後にはプリンやヨーグルトのゴミを綺麗にまとめたり、使った椅子をしまったり、バスドライバーの方へ「ありがとうございます!」と元気よく挨拶したりと、いろいろな子がさまざまな成長をみせてくれました。気がつくと、それをみていた仲間たちがひとりまたひとりとそれらの行動をとるようになっていきました。

 最後に、野外体験に参加したKくんから、「帰りの電車が1時間遅延!でもみんながいたから電車が秘密基地みたいで楽しかった!帰りはさみしかった!」という手紙をもらいました。彼が参加した野外体験は最終日、人身事故で電車が1時間以上遅延してしまいました。しかし、貸し切りだったこともあり、子どもたちは車内を寝台列車のようにカスタマイズ。また、Kくんの姿をみて「電車まだ動かないの~?」と不満げだった班の仲間たちが「楽しい!」と思うまでに成長しました。運転が復旧する頃には「えー!もう動くの~!」という声も。そんな経験をしたKくんからの手紙でした。

 私たちはこの「野外体験」で子どもたちにさまざまなことを教えます。しかし、それはほんの一部に過ぎず、彼らの成長が輝いてみえるのは、子どもたち同士で助け合い、教え合い、ときにはAくんのような子の背中をみて何かを得たときなのだと思います。そして、Kくんのように物事がうまくいかなくても前を向いていける心の成長と、子どもたちの人をみて学ぶ力には、目を見張るものがありました。そんな子どもたちのさまざまな面での成長をみることができました。

花まる学習会 早乙女優介(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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