【松島コラム】『受験生のご家族、そして次のみなさまへ』 2022年2月

【松島コラム】『受験生のご家族、そして次のみなさまへ』 2022年2月

 今年の受験生は、2年間に渡り学校や塾でさまざまな制約を受けながら、受験に臨んだ子どもたちでした。突然の一斉休校、経験したことのないオンライン授業、修学旅行をはじめとする学校行事の中止や延期。どこに行っても検温、消毒、マスク着用が求められ、楽しい給食やお弁当の時間も黙って食べなくてはいけませんでした。気軽に友達と話したり、じゃれ合ったりすることもできませんでした。そして年が明けても、過去最多の感染者数を更新するという本当に厳しい中での、人生初めての受験。最後まであきらめずに受験しただけでもとても立派なことだと思うのですが、こうした状況でも子どもたちは元気に明るく塾に通い続け、入試本番でも存分にその力を発揮してくれました。コロナ禍における2年目の受験を終えて感じたことは、コロナ前と変わることなく、子どもたちは目標に向けてがんばることができるし、その結果として幸せな受験が実現できるという確かな手応えでした。ここに至るまでの間、さまざま授業運営における変更等にご理解とご協力くださいました保護者のみなさまに、改めてお礼を申し上げます。
 間もなく卒業式のシーズンです。長くもあり短くもあった受験生の親としての役割も、これで卒業です。この数年間、思うようにいかないことに自問自答を繰り返す日も多かったと思います。語りつくせないくらいいろいろなことがあったかもしれませんが、次のステージでのさらなる成長を願って新しい門出を誇らしく見送ってほしいと思います。充実した学校生活を送れるよう、ぜひ親御さんがその一番の応援団になってあげてください。最後まで受験生をサポートしてくださったご家族のみなさま、本当にお疲れさまでした。
 拙著でも書きましたが、フィギュアスケートの羽生選手が、ソチオリンピックで金メダルをとった直後のインタビューで、「いま一番したいことは?」という質問に、「早く練習をしたい」と答えていたのが印象的でした。金メダルをとっても満足のいく演技ができなかった彼にとっては、通過点でしかなかったのでしょう。今回の北京オリンピックの結果はこの原稿を書いている時点ではわかりませんが、常に成長し続けたいという姿勢はこれからも変わらないでしょう。
 受験も同じです。それがゴールではない。受験が終わったあとも「塾に行って勉強したい」と言えるような受験をしてほしいと常々思っています。合格の報告に来た6年生から、「何か課題を出してくれませんか」と懇願されたことがあります。「2月は授業がなくて子どもが残念がっています」という保護者の方からの声もいただきます。周りは、「受験が終わったのだから少しのんびりしたら」と考えがちですが、「勉強することが楽しい」という経験をした子どもたちは、読書やスポーツを楽しむことと同じように勉強がしたいのです。
 ところが、とにかく結果を出すことだけが優先され、大人主導で受験学習が進むと、こういう子どもには育ちにくいのです。受験が終わった瞬間に、勉強の「べ」の字も見たくなくなる。精神的なストレスに耐えられる子どもはまだよいのですが、勉強そのものから早く逃げ出したいという思いから、間違った方向に学習が進んでしまうと、たまたま結果が出たとしても、心が伸びきってしまっていたらその先が心配です。やらされている勉強は楽しくない。楽しくないものを長時間やり続けたら嫌いになるのは当然かもしれません。ところが、自分の意志で取り組む勉強は楽しい。楽しいから量が多くても、時間が長くてもやり遂げられる。人間は夢中になったら疲れないのです。そんな経験をしてほしいと願っています。
 高校受験を控えている受験生は、あともう少しです。最後まで自分を信じてがんばってください。
 世の中がいかなる状況になろうとも、それぞれのご家庭にとって意味のある受験をしていただけるよう、講師スタッフ一同全力を尽くしてまいります。

スクールFC代表 松島伸浩


🌸著者|松島 伸浩

松島 伸浩 1963年生まれ、群馬県みどり市出身。現在、スクールFC代表兼花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まる学習会創立時からの旧知であった高濱正伸と再会し、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中である。

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