【松島コラム】『続ける力』 2025年2月

【松島コラム】『続ける力』 2025年2月

 年明け早々、Voicyの事務局から、「VOICY OF THE YEAR 2024年 年間 Podcast(トーク)編 受賞」の連絡をいただきました。正直キツネにつままれたような話で信じられなかったのですが、各部門30チャンネルが選出されるなかで26位だったとのこと。同部門の2位には、ポッドキャスト界では知る人ぞ知る「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」が入り、12位に「ゆる言語学ラジオ」、23位に「ドングリFM」など、人気のポッドキャスト番組が名を連ねていました。この部門にランキングされた番組の主たる配信プラットフォームは、Voicyではなくポッドキャストですから、私の小さな番組でも受賞しやすかったのだと理解しています。しかしながら、多くの著名な番組のその一角に入れてもらえたことはたいへん嬉しいことです。
 「幸せな受験ラジオ」は、2020年9月にスタートした「中学受験ナビ・スクールラジオ」というポッドキャスト番組が前身です。当時、先行きの見えないコロナ禍のなかで、学校説明会はほとんど中止になり、保護者の方が学校情報を入手する方法は限られてしまいました。学校からの動画配信はあるものの、生の声を聞く機会が減ってしまったため、特に受験生のいるご家庭は不安を抱えていたと思います。そこで「何かできることはないだろうか」と考えたのがリモート収録による音声配信でした。首都圏約300校に一斉に案内を出し、OKをいただいた学校からどんどん配信をしていきました。そもそもポッドキャスト自体、どんな媒体なのかご存知ない学校がほとんどで、まったく実績のない番組に、真っ先に手を挙げてくださった学校にはいまだに感謝の気持ちを忘れていません。私自身も収録から配信までの一連の制作は初めてでしたので、試行錯誤の連続でした。ポッドキャストはリスナー特性を把握することが難しい媒体でしたので、「これを続けていくことに本当に意味があるのだろうか」と疑問に思ったこともあります。「毎週水曜日・土曜日に必ず配信する」というルールを決めて、それを頑なに守り続けました。予定時刻に配信がされていないときは、休みの日でも会社に駆けつけて不具合を修正しました。そうしたことを続けていくうちに、出演してくださる学校やリスナーも徐々に増えていき、配信を開始してから2年半後の2023年5月には、Voicyから「あなたの番組をVoicyでも配信しませんか」というオファーをいただきました。Voicyは審査が通らないと配信できない音声プラットフォームで、当時の審査通過率は約5%と言われていましたから、そのVoicy側からの突然のオファーに、「何かの間違いでは?」とたいへん驚いたことを覚えています。
 コツコツ続けることは簡単なことではありません。すぐに結果が出ないものはなおさらです。私は、学校の先生や専門家の方とお話しできることで自分の学びになることが、モチベーションの一つになっていました。そして、メールやコメント欄などで「楽しみにしています」といったメッセージをいただいたり、講演会でお会いした方から「番組聴いています」といった声をいただいたりすることが、何よりの励みになりました。いくつになっても、ちょっとした認めの声かけがやる気につながるものです。
 私の蔵書のなかに『続ける力 仕事・勉強で成功する王道』(伊藤真著・幻冬舎新書)があります。勉強や仕事がなかなか長続きしないで悩んでいる方におすすめしている一冊です。その一節をご紹介します。

 努力を続けてもなかなか成果が出ない。みんな成果が出ないのだったらそれほど気にならないけれど、一緒に勉強を始めたアイツは合格した、同期で入社したアイツは結果を出している──。
 (中略)
 すべて人には、それぞれの「とき」があります。自分と同じことをして、自分より早くうまくいく人がいるとしても、それはその人にとっていいタイミングだったというだけです。 自分にも必ず「いいとき」が訪れます。すべてタイミング、順番の問題ととらえ、焦らず、目の前にある課題を淡々とこなしていけばいいのです。
『続ける力』(幻冬舎新書)(Kindle版 p.45-46)
(中略)
 能力が違う。おかれている環境が違う。だれもが平等なスタートラインに立てるわけではありません。でも、「続ける力」さえあれば、人間はその壁を乗り越えることができます。
 「続ける」ことこそが、すべてのゴールにつながる「王道」なのです。
 (同書 Kindle版 p.126)

 目標を達成するための一番の近道は「ゆっくり急げ」です。ローマ皇帝のアウグストゥスが好んだ言葉で、ギリシャ語では「フェスティナ・レンテ」と言うそうです。なによりも大人が前向きになれる本です。仕事や子育てに行き詰まったときに手に取ってみるといいかもしれません。

スクールFC代表 松島伸浩


🌸著者|松島 伸浩

松島 伸浩 1963年生まれ、群馬県みどり市出身。現在、スクールFC代表兼花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まる学習会創立時からの旧知であった高濱正伸と再会し、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中である。

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