先日ファミリーレストランに行ったときの話です。混んでいたので、受付機で順番待ちの番号を出力して待っていたのですが、なにか様子が変なのです。私よりも先に待っていた人たちが、店員の呼び出しもないまま、順々に店内に入っていきます。「呼ばれていないのに、どういうこと?」と周囲を見回すと、頭上のモニターに気づきました。この店は、順番待ちの番号が表示されたら、決められたテーブルに自分で行かなくてはいけないシステムだったのです。順番が来ても呼び出しの音声すらありません。注文はタブレット、料理を運んでくるのはロボット、支払いはセルフレジ、店員はテーブルの片づけをしていました。人を使わないことでの店側のメリットは大きいのでしょうが、お年寄りや目が不自由な方への対応はどうなっているのか気になるところでした。
一方、JR東日本は、今年2月より「えきねっと」でのマイナンバー連携による「身体障害者割引乗車券」「新幹線車いす対応座席」などの取り扱いを始めました。猛暑のなか、みどりの窓口に並ぶ車いすの方を見かけるたびに、障がい者の方こそ窓口に行かないで切符を買える仕組みにならないものかとずっと思っていました。マイナンバー導入にはいまだ賛否ありますが、こうしたことに利用されるのであれば大いに意味があります。
先日、前さいたま市教育長の細田眞由美先生にインタビューさせていただきました。「さいたまメソッド」によりさいたま市の中学生の英語力を全国1位に押し上げた立役者であり、市立高校改革の一環として大宮国際中等教育学校の立ち上げに尽力された方です。今年出版された『世界基準の英語力』(時事通信社)という著書には、そのさいたま市の教育改革の様子がお人柄そのままに情熱的に描かれています。その一節に次のようなものがあります。
ロボットが買い物ガイドやレストランで配膳を担っていることなどについて書かれた英文を読み、人々の生活がより良くなっているという意見に対する、自分の考えと理由を英語で書く問題です。正答率は20.1%と低かったです。結果を分析した国立教育政策研究所によると、筆者の問いかけに対する自分の考えは書けているが、その理由を書くことに課題がある例が目立ったとのことです。また、無答率も30%弱だったと説明しています。(中略)ニュージーランドから来た留学生による、環境問題についてのプレゼンテーションを聞いて、自分の考えと理由を話す設問です。留学生のプレゼンテーションは、「海洋に、ビニール袋が浮遊している環境問題について説明し、日本では25%以上の人々がお店でビニール袋を購入していることに驚いた。ニュージーランドでは、お店でビニール袋は売っていない。皆、エコバッグを持参している。日本は、お店で、ビニール袋を売るべきではない」という内容でした。この問題は、正答率がわずか4%という低さでした。
いずれも2023年度実施の「全国学力・学習状況調査」の中学3年生対象の問題です。細田先生は同書のなかで、
大学入試共通テストを筆頭に、各都道府県の高校入試も含めて、今後、ますます、「聞く」「読む」「話す」「書く」を統合した総合的な英語力を測る傾向が強くなると思います。(中略)まずは、話し手や書き手の言いたいことや意図などを理解し、それを踏まえて自分の考えや意見を相手に伝えるのがコミュニケーションですから、「聞く」「読む」「話す」「書く」といったそれぞれの力を付けていかなければ、意味のあるやり取りが成立しません。(中略)「自分の頭で考えてそれを言語化する」マインドセットこそは、家庭のなかで育まれる部分が非常に大きいので、保護者の皆さんの意識改革がとても重要になってくると思います。(中略)お子さんに学校での様子を聞いてください。そして、お子さんの身の回りに起こったこと、そしてその時の自分の気持ちを言語化する習慣を付けてください。
と述べています。日ごろから家庭の会話のなかでも「なぜ? どうして?」という疑問や理由を考えることが大切だということでしょう。同書には「家庭で取り組む英語環境づくり」だけでなく、子育てに関するヒントもたくさん書かれています。
親子の会話の大切さは常に言われることですが、思春期にさしかかる小学校高学年や中学生の場合、会話が成立せずに口げんかに発展してしまうこともあると思います。2学期はどの学年でも心配事や迷うことが増える時期です。そんなときはぜひ所属校舎の担当者までご相談ください。
スクールFC代表 松島伸浩
※出典:細野眞由美著『世界基準の英語力』(時事通信社、2024年)
🌸著者|松島 伸浩
1963年生まれ、群馬県みどり市出身。現在、スクールFC代表兼花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まる学習会創立時からの旧知であった高濱正伸と再会し、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中である。