現在私は、中学3年生の授業をサポートしています。基本は丸つけと、たまに問題の解説をおこなう程度ではありますが、ここ最近、解答から生徒たちの成長を感じます。以前よりも正答率が上がっている。計算ミスが減った。学校の成績が上がった、模試の点数が上がったと嬉しそうに報告してくれる生徒もいます。受験生にとっていまの時期は、まさに追い込みの真っただ中です。全員が満足のいく受験となるように祈るばかりです。
さて、サポートとはいえ、問題の解説をおこなっていると生徒たちから質問を受けることがあります。ある生徒から「この問題の解説をしてほしいです」と問題用紙とその解説を渡されました。自習の時間だったこともあり、私は「解説は確認してみたかな?」と返しました。すると「解説は読んだんですけれど、読むのに疲れちゃって、よく理解できなかったんです」とのこと。問題を確認してみると、関数のグラフを利用し、座標や図形の大きさを求める問題でした。そのなかでも後半の、比較的難しい問題です。解説を見た瞬間、私は「なるほど」と思いました。問題番号の後ろにはずらりと文章が続き、これは本当に数学の解説なのかと思ってしまうものでした。これには「読むのに疲れて」も納得です。一旦問題と解答を預かり、私も解説を読み始めました。文章の最初は前提条件の確認から始まります。グラフの関数、座標の値をメモしていきます。次に今回の問題を解くのに必要な条件の提示。そしてその条件を満たすために必要な補助線を引き、元々のグラフとの交点やその座標、新たに増えた線を式で表し、と進めていき、ようやく答えにたどり着きます。これを踏まえて、自習している生徒のもとへ行き解説をしました。一つひとつ説明していくと、納得することができたようです。というのも正解するのに必要な式や座標の求め方は既習の内容であり、答えがわかれば難しいことではないからです。受験問題とは得てしてそういうものです。ではどこで差がつくのか、今回の問題でいえば、それは「見える力」です。補助線を引くべき場所が見える力であり、図形のなかに隠れた特定の形を見つけられる力です。これらの力は幼児期には感覚的に身につけることができますが、年齢が上がるにつれてそれが難しくなります。しかしだからといって幼児期の子どもたちに「受験のために」と伝えても、やる気や興味を引き出すことはできません。そこでやっぱりいいなと思えるのが、なぞぺーやレインボータイムです。その強みはまるで遊びのような感覚で楽しみながら取り組み、「見える力」を育むことができるところです。楽しんでいるときこそ子どもたちが一番伸びるとき。楽しそうと思えると意欲的に取り組むことができます。「やらされ」でないからこそ吸収力が発揮され、触れた問題は子どもたちのなかに経験として蓄積されていきます。その蓄積がいずれ「見える力」として子どもたちのひらめきにつながるのです。
この出来事を通して、私は「解説を読む」ということのなかにも花まるで伸ばしていける力が含まれていると感じました。それは「読解力」と「情報整理力」です。前者は低学年コースの算数プリントで、後者は高学年コースでのSなぞぺー(発展的な思考力教材)の問題を解くうえで重要な力です。花まるで培われる力は、その先の受験勉強へ確実につながっているということを改めて実感しました。まだ少し先の未来に子どもたちが大輪の花を咲かせられるよう、いま伸び始めている力を今後もさらに伸ばしていけるよう、全力でサポートしてまいります。
花まる学習会 坪田充生(2023年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。