いまの子どもたちが大人になる頃には、日本、世界はどうなっているのか、考えることがあります。パソコンが普及し、誰でも簡単にインターネット接続が可能になったことで、子どもたちもさまざまな情報を得られるようになりました。学校教育でもタブレット端末が導入されるなど、情報通信機器は必要不可欠なものとなっています。
私は学校教育で、黒板を使った授業を受けてきました。黒板の歴史を遡ってみると、日本では、明治期に黒板の原点ともいえる「塗板」が誕生し、主に寺子屋などで使用されていたそうです。明治5年には、日本で初めての学校制度のスタートと同時にアメリカから「ブラックボート」が持ち込まれた、とされています。
140年もの間、黒板を用いて知識を教わっていた歴史も、パソコンやタブレット端末に置き換わりつつある時代。子どもは特に適応能力が高く、興味関心の赴くままに行動すると考えています。
世界のおもしろいことを簡単に知ることができる。そんな時代を過ごす子どもたちは、どんな仕事をしてどんな生活をしていくのか。子どもの流行を把握しつつ、これからの未来を楽しむ気持ちで、日々子どもたちと接しています。
子どもたちと接するなかで、驚かされることがあります。それは、子どもたちが発表をやり遂げる瞬間です。ある高学年授業でのことです。自分の好きなことについて3分間発表する授業でした。オンラインであったとはいえ、何かしらの緊張感があったと思います。しかし、トップバッターに4年生のIくんが名乗りを上げました。この時点ですでに「すごいな」という気持ちだったのですが、「けん玉の技」について、実演を含めて順序だてて紹介していたことが何よりの驚きでした。
人に何かを(わかりやすく)伝える、ということはこれからの時代も必要とされると思います。子どもの頃から相手にわかりやすく伝えること、を経験する機会はそれほど多くないと思われますが、その後も、「マインクラフト」「どうぶつの森」といったゲームのこと、「水泳」「野球」「バドミントン」といった習い事について、3分間堂々と発表する子どもたちの様子に、これからの成長が楽しみになりました。
また、別の日の授業で、感動し、勇気づけられることがありました。4年生のTくんが問題をどういう順序で解いたのか、クラスの前で説明したときのことです。いつも決してハキハキ話すわけではなく、どこか自信がなさそうにも見えるTくんは、他者推薦によりみんなの前で発表することになりました。ペアのGくんは「問題の解説がわかりやすかったから」と推薦理由を話していました。
Tくんはいきなりのことにも動じていない、だけれども、どこか自信がない様子で、みんなの前で発表をしました。時間にして2分。Tくんが説明をやり遂げた瞬間、私は一番大きな音で拍手を送りました。
子どもたちがペア同士の発表の振り返りを紙に書く時間、Tくんの鉛筆が止まっていました。見るからに、やり遂げたあとの脱力した状態でした。「発表はどうだった?」と聞くと、「すごく緊張した。みんなのお手本にならなきゃと考えていた」と言葉で伝えてくれました。緊張したなかでも動じずにやり遂げたことと、Tくんの想いに感動しました。そして、Tくんの姿に「私も果敢に挑戦していこう」と勇気づけられました。
時代の変化とともに学習指導要領も変化するなかで、これからの未来を担う子どもたちは、私の子ども時代とは違った教育を受けています。そのため、できる(得意な)ことが異なるのも必然といえばそうかもしれません。しかし、素直に「すごい」と思えるからこそ、「自分も負けていられない」という気持ちになります。子どもたちが大人になったとき、どんな仕事があるのでしょうか。いつか教え子と仕事ができるその日を楽しみにしています。
花まる学習会 佐々木真音(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。