【花まるコラム】『野外体験のすゝめ』臼杵允彦

【花まるコラム】『野外体験のすゝめ』臼杵允彦

 私が思う野外体験の魅力は、親元を離れて「人間関係」をつくる経験ができることです。TVはもちろん、マンガやゲームもありません。睡眠時間を除くと、約15時間は常に誰かと一緒にいる計算になります。そんな環境で、まず子どもたちが得られるもの。それは【人に慣れる】経験です。いろいろな子とコミュニケーションをとるなかで、上手くいかなことや喧嘩、我慢など、小さな荒波を経験していくうちに、多少いやなことをされても、動じず、うろたえなくなっていくものです。そんなたくましさを得る一方で、人付き合いへのプラスの価値観も醸成されていきます。以前、野外体験に毎回行っていたAちゃん(小学3年生)に参加理由を聞いてみたことがありました。すると「友達ができるのが嬉しいから」と話してくれたのです。きっとAちゃんはこの先、どこの国に行こうが友達の輪を楽しみながら広げていくことと思います。数年前、こんなこともありました。「去年のサマーで上級生に優しく教えてもらったから、今度は僕が下の子にしてあげたい」そう言って参加した 2年生 のBくんです。宿で自分のしたくを終えるたびに、一生懸命1年生のフォローをしていました。その姿はとても眩しかったです。いろいろな子どもたちを見てきたなかで、気づいたことがあります。それは、たくさん人間関係を築いていくうちに、子どもたちのなかに、「こうしてあげたい」「自分はこうしたい」などの、主体性のエンジンとなる「価値観」が醸成されていくということです。親元を離れた子どもたちが野外体験という荒波のなかで掴むその価値観は、本物の実力となって積み重なっていきます。かくいうわが家にも2頭の恐竜(小学2年生の長男と1歳の次男)がおりまして、教育方針はずばり「わが子には、参加可能な野外体験へすべて行ってもらう」です。長男も花まるっ子で、小学1年生の頃、サマースクールと雪国スクール2回(12月と3月)に参加。元々は初対面の子がいるとすぐに固まるような人見知りだったのですが、ついこの前、公園で砂場遊びをしていたところ、知らない子に優しく「これ使っていいよ」とお気に入りのスコップを渡して、一緒に遊び始めるという光景を目の当たりにしました。わが子の成長というのは、一番近くにいる親ほど驚くものだと感じた次第です。

 最後に、野外体験初参加の子のエピソードを紹介します。小学1年生 のCくんは12月の雪国スクールで大きく変わりました。最初のうちはことあるごとにけんかの連続。ほかの子のスキー板が自分の板にコツンと触れただけでも、「何をするんだ!」と声を荒らげ、チームで並んで食事行く際も「僕が先頭だったのに!」と癇癪を起こす。初日、一番友達を怒らせたのも、一番泣いたのもCくんでした。しかし、そんな彼が二日目の夜から変貌をとげていったのです。きっかけは、Cくんの何気ない一言でした。「僕、笑わせるのが得意なんだよ」この瞬間を決して逃してはならないと思った私。「へぇ~!何かやってみてよ!」そう盛り立てると、気持ち良くなったCくんは、全力で披露してくれたのです。そう、「アイーン!」を。あまりの滑稽さに、その場が爆笑の渦に包まれました。彼は一気に班のムードメーカーへ。その後、Cくんの言動が変わったことは言うまでもありません。ことあるごとに仲間を笑わせようと躍起になるCくん。その変顔のおかげで、班からすっかりけんかはなくなりました。スキー板が当たってもお構いなし。トイレのスリッパを私が揃えていたら手伝ってくれるようにもなりました。そして後日、お母さまからいただいたアンケートがこちらです。

 年明け頃から「ママのお手伝いするの、大好き」という発言を頻繁にするようになり驚いています。そして、それが現在も続いていることが一番の驚きです。 こちらがしつこく聞かないとなかなか感想を言ってくれない息子ですが、何度も言っていたのが、「リーダーは優しいのに何も賞を貰えなかった。だから、かわいそうだ」でした。人に対しての不満は、すぐ愚痴のような形で聞かされますが、こういったことを彼の口から初めて聞きました。先生、ありがとうございます。C母より

 みなさまのご参加をお待ちしております。

花まる学習会 臼杵允彦(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

花まるコラムカテゴリの最新記事