【西郡コラム】『安心、安全だけではない、オンライン授業』 2020年11月

【西郡コラム】『安心、安全だけではない、オンライン授業』 2020年11月

 新型コロナとの共存が日常になり、学習塾もリアルな対面授業が求められているなか、学習道場では授業、自学をすべて(一部の受験生を除く)オンラインでの継続を保護者にお願いした。理由はある。

 第一に安心、安全だ。外出しなければ、新型コロナに罹ることはない。通塾時の事件、事故の危険もなく、通塾にかかる時間の無駄も省く。コンビニ等の店に立ち寄る誘惑もない。安心、安全は子どもたちの内面に影響していた。集中力は真のリラックス、心身の解放からはじまる。どこかに緊張があれば集中を妨げる。自宅で学習できる安心、安全は子どもたちをリラックスさせ、緊張から解き放ち、集中して学習できる環境になった。

 「子どもたちは素の自分で学習できている」授業を担当する道場スタッフからの報告だ。素の自分でいられることは、自分の学習に集中でき、学習を自分事としている。外の刺激に反応しやすい子どもは、授業に集中できないことも多いが、オンラインでの学習は、ヘッドホンをつければ外の刺激を遮断して、自分の学習に向き合うことができる。なにより、オンラインでは子ども同士の私語で集中が途切れることはない、ミュート機能がある。

 オンラインは、視覚効果が大きい。解説動画が分かりやすいのは当然だが、「文章を読んで要点に線を引く」と言葉で伝えられるより、「ここに注目!」とまず先に視線を画面へと向ける。画面を見れば、一目瞭然。聞いて理解することより、目で見て理解する方がイメージできる。リアルな対面授業の板書より、眼前の画面に映し出される動画が子どもたちの理解を深め、定着する。聞くことの訓練も重要だが、まずは視覚の正確さの方が受け入れやすい。目で見て理解を重ね、聞いて理解を伸ばす。

 分からなければ、解説動画を見直して復習する。解き方、考え方を理解して再挑戦する。分からなければ、質問する前にもう一度、動画を見直し、自分でなんとか解決しようとする。「自分で何とかする」は当事者意識の始まり、学習者としての自立の一歩だ。解決までたどり着くプロセスを自分で経験して、何とか自分のものにしようという意欲や覚悟が定着せすれば、いい学習習慣になる。

 持って生まれた才能を伸ばすのも、補うのも、訓練次第。毎日やれば、だれでも伸びる。毎日やることが学習習慣。やろうという意志の働く前に、起床後の歯磨きのように、当たり前にやることが習慣だ。オンラインは、ボタンを押せば、即“毎日道場(平日開放している自学室)”で、自学ができる。学校の宿題、道場の課題、音読、サボテン(計算)、そして、読書も日課にする。これらを自学室で取り組む。

 学習は一人で立ち向かうものだが、一人だと怠惰になりやすい。だれかが見ていることで自制でき、みんなが自学する姿を見て切磋琢磨、励みにもなる。交わす私語もない、つかず離れず、オンラインはいい空間を提供できる。テレビもない、ゲームもない時間をつくりたい。そこで、一気にやることを終わらせる習慣、読書をする習慣、毎日道場での自学は、この学習習慣をつくることを目的にしている。

 毎日道場にて一日を振り返り、学習日誌を書く。何を学んだか、何を考えたか、何を感じたかを思い描き、蘇らせることは、精神面での子どもの成長に貢献する。学習日誌では、学習したことを自己評価して、明日の学習の計画を立てる。Plan、Do、Check、Actionの初歩から始める。新年度から、朝の時間もオンライン自学が始まる。登校前、音読やサボテンに取り組む。早寝早起き、朝学習で脳を活性化して、学校での学習に臨み、一日の学習をより有効にする。

西郡学習道場代表 西郡文啓


著者|西郡文啓

西郡文啓 1958年生まれ。県立熊本高校卒業。高濱代表とは高校の同級生、以来、小説、絵画、映画、演劇、音楽、哲学等、あらゆるジャンルの芸術、学問を語り合ってきた仲。高濱代表が花まる学習会を設立時に参加。スクールFCの立ち上げを経て、花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として西郡学習道場を設立する。2015年度より、「地域おこし協力隊」として、武雄市の小学校に常駐。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。

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