教育哲学

【松島コラム】『思春期の進路』 2020年10月

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 親が子どもの進路についてどこまで口を出すべきなのか、ご家庭によっても考え方は違います。夫婦で意見が食い違うこともあるでしょう。
「公立だったけどとても充実していた。無理して私立に行く必要はない」「恩師にも一生の友だちにも出会えたし、私立に行ってよかったわ」

 単に「公立か私立か」というだけでもさまざまな意見があります。しかし、あくまでも自分の場合はそうだったということにすぎません。大切なのは、「わが子の場合はどうなのか」です。そもそも、公立に通えば私立の良さは分からないですし、その反対もいえます。自分の経験でしか語れないところが子育ての難しさです。
 小学生の場合、都市部では中学受験をするかしないかという選択肢があります。「うちの子は受験に向いているのか」「どこの中学校が合っているのか」など相談は多岐にわたります。ほかの人が気になり、「周りの子と比べてうちの子は全然やる気がありません。何かいい方法はないでしょうか?」という相談も絶えません。ある悩みが解決したら次の悩みが生まれます。子どもは常に成長していますから、親としてはいつまでたっても不安は消えないのです。

 私たち日本人は長い間、「正解主義」の教育を受けてきました。あまり疑うこともなく、それが将来につながる勉強だと思ってきました。

 しかし、勝ち組といわれる偏差値の高い大学に進学しても、実社会に出ると相手次第で答えが変わったり、明らかに間違っていることを正しいと言われたり、その狭間で悩み、鬱になってしまう人たちがたくさんいます。人間関係にこそ正解はないのですから、よく考えれば当たり前なのですが、どこかに正しい答えを求めてしまいがちです。

 子育てにも正解はありません。私はこれを前向きに捉らえていただきたいと思っています。正解を探す必要はないのです。子どもが思ったように行動してくれないのは、親のせいではなく子どもの特性なのです。思春期がまさにそうで、むしろ親の言うとおりに行動する子は、コントロールされていないか心配になります。親の言うことを聞かない子は、自分の意思をちゃんと持っている子だと思います。

 私が受け持ったクラスにもやんちゃな子がいました。でも、手がかかる子ほど、豊かな発想や人とは違う才能を持っていて、欠けている部分を補ってもあまりある成長を見せてくれました。

 ところが、欠点ばかり指摘しすぎると、同時に長所もつぶすことがあります。ある県内有数の進学校で、生徒向けの講演をしたときの話です。失敗することの大切さを強調して伝えたところ、生徒から「失敗はしてはいけないと思っていました」「勇気が出ました。いろいろなことにもっと挑戦したいです」など、大きな反響がありました。

 成績表でオール5をとるような優秀な生徒の中には、いい成績をとること自体が目的になり、自分自身の個性に気づけない子がいるのです。最近は、いい大学に進んでもその先の進路を決められない学生が多いとも聞きます。

 今回の新型コロナウイルス感染症の問題のように、子どもたちはまさに答えがない未来を生きていきます。過去の経験や実績が通用せず、失敗から学ぶことが当たり前の時代になるのです。そういう社会では、失敗を恐れず、自分の意思で決断し、行動する人間が求められるでしょう。

 わが子のことを一番理解しているのは親ですから、悩み抜いて出した答えは、その子にとって最善の選択です。わが子を信じ、良いところを認め、失敗してもたっぷりと愛情を注いであげる。その中で進むべき道は自然と見えてくると思います。たとえ途中で迷っても、親から受けた愛情こそが大きな支えになることは間違いありません。 

スクールFC代表 松島伸浩


著者|松島 伸浩

松島 伸浩 1963年生まれ、群馬県みどり市出身。現在、スクールFC代表兼花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まる学習会創立時からの旧知であった高濱正伸と再会し、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中である。

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