都内の中学入試が集中する2月1日からの数日間は、何度経験してもわが子のことのように身を削られる思いをします。
1月31日の夜、担当している生徒の夢を見ました。
場所は入試会場。
なぜか、問題を解いている生徒の隣の席で、その様子を見ているのです。
ときどき、「先生、この問題、なんか変です!」と話しかけてきます。
「テスト中だから話しかけないで集中しなさい!」と私が言っています。
残り時間がもうありません。
それでもその生徒は私に話しかけてきます。
「時間がないよ」と言うと、「もう終わっていますよ!」と答えたのです。
「えっ?もう終わったの」という場面でその夢は終わりました。
明けて2月1日の午後入試。
その生徒の応援にかけつけて、ご両親にその話をすると、「先生、よっぽどうちの子が心配だったんですね。でも正夢になったらいいですね」と、和やかな雰囲気の中、生徒を見送ることができました。
午前中に第一志望校を受けてきたその生徒は、「きっと落ちている」と少し弱気なことを言っていましたが、「緊張して疲れた」とも言っていたので、全力を出し切れたのではないかと期待が持てました。
結果は見事合格でした。
中学入試は、同じ学校で複数回入試を行うことが多いのですが、ある生徒は、1回目の入試が不合格。
「傾向が変わったから、2回目は受けずにほかの学校を受けたい」と言ってきました。
問題を見る限り、出題形式は変わっておらず、たまたま苦手な問題が多かったため、そう感じたのでしょう。
彼とお母様には、むしろ同じ単元の問題は出ない可能性が高いので、2回目こそチャンスがあると伝えました。
予想通り、2回目の入試では得意な問題が出題され、自信満々で見事合格を手に入れました。
ちなみにほかの学校に変更していたら、今年の問題を見る限り、苦戦していたと思われます。
想定外のことが多少あっても、事前に決めた併願プランを崩さないことが大切です。
初日の午前入試、午後入試が不合格。
2日目に同じ学校を受験したら、両方とも合格したケースもありました。
原因を一言で言い切るのは難しいですが、明らかに違っていたのは、子どもの入試会場での表情でした。
1日目は相当緊張したそうですが、2日目はいつも通りの笑顔でとてもリラックスしていました。
不合格という結果に対してご家庭でしっかりケアできたのだと思います。
あとから聞けば、お母様は子どもには動揺を見せないように必死だったそうで、その代わり子どものいないときにお父様の前では不安な表情を見せていたとのこと。
ご家族の協力を得ながら、ご自身の気持ちをしっかりコントロールされていたのです。
中学受験では、1つ合格をもらえると自信になり、その後は落ち着いて臨めるケースも少なくありません。
進学先が確保できない状況が続くと、一番ダメージを受けるのは保護者の方です。
想像以上のプレッシャーに眠れない方もいます。
子どもは午前・午後の入試、そして塾での翌日に向けた勉強と、びっしりスケジュールが組まれていますから、あまり落ち込んでいる暇はありません。
それでも合格をもらえないことで自信を失い、本来の力を発揮できなくなってしまう子もいます。
12歳の受験ですから、最後は子どもの気力にかかってくるところも大きいのです。
結果オーライも紙一重です。
拙著などでも一貫して申し上げていますが、進学する意思がある合格圏内の学校を1校、併願校に組み込むことをお奨めします。
偏差値はあくまでも参考にすぎませんが、押さえの学校としては、合格可能性が80%を上回っていることが1つの目安です。
具体的なことは各校舎の担当者に面談等でご相談ください。
久しぶりに受験生向けの本を出します。
「塾に通う男女4人の成長物語を通して、自らの姿と重ね合わせながら頻出漢字や語句を学習していく」というコンセプトです。
15話に分かれていて、悩みを抱え壁にぶつかりながら、最後はまさにチームとして受験を乗り越えていくストーリーです。
私が過去に経験した事例をもとに作られていますが、子ども向けに実際よりもライトな内容にしてあります。
「中学受験物語ですらすら頭に入るよく出る漢字720」(実務教育出版)
受験は通過点ですが、この先の人生における大切なものに気づくことができる機会でもあります。
今年も最後の受験が終わっても、当たり前のように自学室で入試問題の振り返りをする生徒がたくさんいました。
自分自身がまだ合格を得ていないのに、クラスの仲間のことを心配し、気遣う生徒もいました。
そんな子どもたちの成長が本当に嬉しかったです。そんな素敵な子どもたちに出会えて本当に幸せでした。
高校受験の本番をひかえている生徒は、日ごろの成果を大いに発揮してほしいと願っています。
先生たちはいつでもみなさんの味方です。最後まで応援します。
スクールFC代表 松島伸浩
1963年生まれ、群馬県みどり市出身。現在、スクールFC代表兼花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まる学習会創立時からの旧知であった高濱正伸と再会し、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中である。