桜を見ると、人生の節目節目を思い出します。
入学式ーー。満開の桜の木の下で、中学校の入学式を迎えました。着慣れない制服を身に纏い、小学生の頃から仲のよかった友人と一緒に登校しました。“中学校”という新たなフィールドに希望と不安を抱きつつ、学校の門をくぐりました。知っている顔を見て安堵したり、優しそうな先生も怖そうな先生もいて、「優しい先生がいいなぁ」なんて思ったり。さまざまな気持ちが混ざった一日の終わりには、中学校の桜の木の下で、母と一緒に写真を撮りました。その写真は一生の宝物です。
結婚式ーー。桜咲く4月に結婚式を挙げました。結婚式当日は、雲一つない青空と満開の桜が私たちを迎えました。「いい天気だね」「きれいだね」そんなふうに言葉を交わしながら青空と桜の花びらを見つめる家族、親戚の姿を見て、「あぁ、この日を迎えることができて、本当によかった」と心から思いました。言い尽くせないほどの感謝の気持ちにあふれる一日となりました。
花まるの教え子ーー。中学入試ぶりに再会しました。彼女は4月から中学2年生です。一緒にランチをして、お互いの近況を報告し合いました。屈託のない笑顔、照れたときに両手で顔を隠すところ、真剣な眼差し……。どの表情も数年前のまま。あまりにも当時と変わらない表情だったので、つい昨日まで花まるの時間をともにしていたような感覚になりました。
帰り道には神社がありました。
「先生、一緒にお参りしよう」「うん、いいね」
その神社には、咲きはじめの桜の木が一本ありました。桜の木の下で手を合わせます。教え子とこんな時間を過ごす日が訪れるなんて……。なんとも感慨深かったです。
母の病ーー。数年前の3月の終わり、私の母は病気で亡くなりました。闘病中の母と一緒に満開の桜を見ることを約束していましたが、その年は寒冬ということもあり、果たすことができませんでした。しかし、母が亡くなった数日後、桜が満開を迎えました。どうしようもない悲しさに襲われ下を向く日々ではありましたが、満開の桜を見ようと空を見上げると、自然とその心に元気が取り戻されていきました。私たち家族がいつまでもうつむいた日々を過ごすことのないようにと、桜は母からの最後のプレゼントだったのかもしれません。
出会いも別れも、あと一踏ん張りの勇気と希望があればというときも、そばで寄り添ってくれたのが桜でした。
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桜に特別な想いを抱いている小学3年生の女の子がこんな作文を書いていました。
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わたしは、桜の研究者になります。そして、ソメイヨシノよりもきれいな栽培品種をつくって、お父さんとお母さんと弟にプレゼントしたいです。
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家族みんなが一本の桜の木から勇気をもらったできごとがあり、自分もそういう桜を生み出したいと思ったそうです。
決して欲張ることなく、長い年月をかけて育ち、芽を吹かせるのは1年に一度だけ。満開に咲き誇る桜の美しさも、惜しみなく散っていく儚さも、いつ、どの場面を切り取っても、何かを彷彿させられる桜には、不思議な魅力があります。
そんな桜が見たくって。春が待ち遠しくなります。
花まる学習会 生井ちま(2024年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。