【西郡コラム】『夏期講習、あのときは本当によく勉強した』 2025年7・8月

【西郡コラム】『夏期講習、あのときは本当によく勉強した』 2025年7・8月

 早寝早起き、夏の暑さに負けない体で充実した夏休みを送りたい。6時30分から始まる朝道場は、発声から始まり、四字熟語、ことわざ、詩・古文、一分間で読み切る400程度の文章、漢字や漢字の知識を音読する。スラスラと音読することは国語の基本訓練で、音読の訓練はやり続ければ誰でも成果は出る。サボテン(計算)で脳をフル回転させ没頭し、冷静に自分を俯瞰して答え合わせをする。朝の音読やサボテンは一気に集中力を高め、脳を活性化させる。
 道場本科コース(小学4年生、中学受験をしない小学5・6年生)には9時30分から各80分の算数、国語の授業がある。算数では四則計算、文章題、図形などの思考力問題に取り組み、国語では文章読解に語句知識や漢字を学習する。小学校の学習は中学・高校と続き、生涯学び続けるはじめの始め、礎になる。小学生こそ、正しい学習観をもって正しい学習法を身につけることが大切で、夏期講習でもこれが指導の中心になる。
 「感想文の書き方」と「本の帯を作ろう」という特別授業は、講習の一日分をそれぞれ使う。「感想文の書き方」はひな型、テンプレートにそって、子ども自身が考え深めて文を作る。『走れメロス』(太宰治)を題材にしたとき、ある生徒はすぐにかんしゃくを起こす自分を「邪知暴虐の王」と重ね、省みて感想文を書いた。文学は人間性を育むゆえん。「帯を作ろう」はお気に入りの本の一文要約であり、コピー文でもある。惹きつける魅力あるキーワード、一文を探し出す。日頃の授業では見られないような発想をする生徒が出てくる。
 夏休みに多くの人と出会う、自然体験をする。夏のさまざまな経験は子どもをたくましくする。水泳、サッカー、野球、バレエなど習い事に集中的に取り組み、心身を鍛える。人との出会い、自然体験、心身の鍛錬、そして、夏期講習は頭を鍛える。
 小学5・6年生受験科コースの朝道場では、確認テストに取り組む。授業で習うとそのときはわかったような気になっていても、実際に自分でできるとは限らない。わかった気になることと実際にできることとの隔たりを知るのが確認テストで、確認テストを繰り返すことで「自分一人でできる」という軸をもって学習に取り組むようになる。確認テストで点数が確実にとれるようになると、学力は上がっている。
 4教科の生徒は午前に算数と国語、午後に理科と社会の授業があり、2教科の生徒は、午後、復習のための課題に取り組む。オンライン自学室で自習する。朝道場、授業、自学まで、道場のオンラインですべてやりきる。夏期講習中に毎日やること、やりきることが大切で、水泳、サッカー、野球、バレエなども連続して練習することで無駄な力が削ぎ落とされ、体幹がよくなり、集中が続くようになる。この感覚は学習も同じで、夏期講習で学習に最適な取り組み方を身につけ学習体力を作る。
 中学受験に必要な学習は小学5年生のカリキュラムでカバーする。次から次に新しい知識や技術を学ぶ。受験学習に戸惑い、時間に追われ、続ける自信をなくし、一学期で受験をやめたいと言い出す子どもも出てくる。何ごともすぐにうまくはいかない、やりぬくなかでしか克服はできない。叱咤激励されて夏期講習を完走する。そうすれば、やめたい気持ちは持ち直す。
 受験学習の基礎基本から学ぶ5年生は、学習に対する取り組み方、考え方が大切で、できたことよりも間違えたこと、できなかったことが学習の優先であることを学ぶ。ごまかしやカンニングでその場の恥ずかしさを隠しても、学力は伸びない。正しい、正直な学習の仕方が最も効率のよい学習法だと心底気づいたときに学力は身につく。試行錯誤して、各教科の考え方、解法、メモやノートの取り方など正しいやり方を自分で作っていく。夏期講習はじっくりと自分の学習に向き合う時間になる。
 受験学年である小学6年生は、夏の学習で大きく飛躍するチャンスだ。受験の学習範囲を一通り終え、基礎基本がどれだけ定着しているか、どれだけ日々の学習を積み上げていけるか、それをどう使うかを応用で試す。漢字や計算など勤勉さで量をこなすのも夏期講習、愚直に受験学習に向き合えるかどうか、気力がいる。自分一人で気力を維持するのは難しいから、朝道場、午前・午後の授業、夕方の自習まで道場の夏期講習で否応なしにやりきる。
 一生のうちでどこかで学習を詰めてやり切った、という経験は必要で、挫折を乗り越える拠りどころになる。中学受験は小学生にとって過酷な挑戦だが、中学受験をすると決めたからには、あのとき、私は、ぼくは本当によく勉強した、といつか思える夏休みにしたい。

西郡学習道場代表 西郡文啓


🌸著者|西郡文啓

西郡文啓 1958年生まれ。県立熊本高校卒業。高濱代表とは高校の同級生、以来、小説、絵画、映画、演劇、音楽、哲学等、あらゆるジャンルの芸術、学問を語り合ってきた仲。高濱代表が花まる学習会を設立時に参加。スクールFCの立ち上げを経て、花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として西郡学習道場を設立する。2015年度より、「地域おこし協力隊」として、武雄市の小学校に常駐。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。

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