教育哲学

【西郡コラム】『保護者会で話したこと その二』 2020年7月

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休校、外出自粛、自宅での生活を強いられた子どもたちにオンライン授業で最初に話したのは、「今、この世で起きていることをしっかり見て、感じて、考えてください」ということ。
繊細な子どもは不安を募らせる。
学校は休みと前向きに捉える子もいる。
子どもも様々だが家の中に引きこもりの生活が続けばどんな子もストレスを感じ、心身の発達にいい影響はない。
制約された生活が続くと子どもたちも元気を失う。
それでも、子どもたちに励ましや気遣いの言葉より、今、何が起こっているか正面から見据えなさいと伝える。
見えない新型コロナに自分も罹るかもしれないという恐れ、この生活がいつまで続くのかという不安、抑圧された生活への苛立ち、自分に起こる感情にそのまま向き合う。
自分の感情をこれだけ揺れ動かす経験はなかなかできない。
自分の中に起こる感情は学習者の源だと思っている。
避難、敬遠、保護は子どもには不必要、正面から現実を受け取り感じること。
負も正も刺激が脳や神経や身体を成長させている。

学校に行くこともできず、家から出ない生活を強いられ、世界中にコロナの感染者が爆発的に増え、死者も出ている。
この状況を認識してほしいのは、当たり前が当たり前でなくなっているから。
起きて学校に行って、授業を受けて学ぶ、給食もある、好き嫌いがあっても級友がいる、先生がいる、この当たり前がどれだけ貴重なことなのかを感じてほしい。
なぜこんなことになっているのか、考えてほしい、感じてほしい。
自分事として考えてはじめて学習が始まる、という思いで学習道場をつくった。
今、自分事として考え、感じざるを得ない状況にいる。
逆境は人を潰すこともある両刃だが、逆境が教育的なのは自分事として考える境遇に否応無しに置くからだ。

何もない時に、「なぜ、学ぶのか」といった話は説教としか受け取られないが、今、この状況なら、「なぜ、学ぶ」はどんな子どもにも自分事として突き刺さる。
誰もが知恵を出して、なんとか生き延びようとしている今を見れば、「生きていくために、学ぶ」という答えは誰でもわかる。
想像もしなかった危機が目の前に起きている。
何とか必死になって生活を支えるお父さんお母さんがいる。
あなたたちは今守られている。
あなたたちが大人になった時、あなたたちが何とか生きていくために、社会を築くために働かねばならない。
そのために、学んでいる。サボテン(計算)や音読は何の役に立つか?
集中力を高めて、将来起こりうる危機に打ち勝つ頭と身体、そして、心を作るために鍛えている。
今は何もできない。
将来生きていくため、社会を作るために、学んでいる。

ウイルスはどこにでもいるという。
どこにでもいるウイルスが突然、人を襲うウイルスへと変異する。
忘れたころに新たなウイルスが強襲してくる。
ウイルスだけではない。
3.11東日本大震災での津波の高さは10m以上にもなった。
誰が想像したか。
3m以上の高い津波が来ます、避難してください、は常識の範囲、無理もない。
甚大な被害は津波の直撃だけはない。
目に見えぬ放射能汚染も引き起こした。
“目に見えぬ“は負の想像を膨らませる。
昨年度、花まるの授業をおこなうために福島県の公立小学校を月に一度、訪問した。
日本有数の風光明媚の地に汚染土を覆うシートの群が現れ、学校には放射能数値を示す装置が立つ。
目には見えぬ汚染の現実が窺える。
年月をかけ、立て直して生活を始め、続いている。
子どもたちも学校に戻り、この地でいつも通り学んでいる。
どんな状況でも学ぶ。

お父さんお母さんが何とか生活を支えている。
手伝いといったレベルではなく、家族の一員として自分は何をするかを考える。
誰かやってくれる、後でやる、は通用しない、わがままは許されないことを悟る。
学校で学ぶことだけが学習でない、今の生活それ自体が子どもたちを鍛えている。

西郡学習道場代表 西郡文啓


著者|西郡文啓

西郡文啓 1958年生まれ。県立熊本高校卒業。高濱代表とは高校の同級生、以来、小説、絵画、映画、演劇、音楽、哲学等、あらゆるジャンルの芸術、学問を語り合ってきた仲。高濱代表が花まる学習会を設立時に参加。スクールFCの立ち上げを経て、花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として西郡学習道場を設立する。2015年度より、「地域おこし協力隊」として、武雄市の小学校に常駐。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。

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