【西郡コラム】『5785回、授業に参加します。』 2023年6月

【西郡コラム】『5785回、授業に参加します。』 2023年6月

 道場の6年生には、中学受験をするクラスと公立中学校に進学するクラスがある。中学受験をする生徒には合格したいという目標がある。公立中学校に進学する生徒の多くは、差し迫る目標は持てず、中学校に入って成績を出すため、行きたい高校に行くため、将来の夢を実現するため、生きていくためと言っても学習が自分事となってこない。少しでも学習に、授業に前向きに取り組めるよう、授業冒頭、「訓話」をする。
 小学5年生までに45分授業をどれぐらい受けてきたと思いますか?  4770回です。これは文部科学省が定めた授業数で、大概の学校は4770回の授業数を基準に時間割を組んでいます。1年850、2年910、3年980、4・5年各1015、合計4770の授業を5年間で受けたことになります。今年一年の授業数も1015です。小学校の6年間で5785の授業数になります。
 みなさんに伝えたいのは、これだけの授業数を受けるわけですから、どのような心構えや態度で一つひとつの授業に参加するかで、授業を積み重ねるかで、みなさんの能力や学力の伸びが違ってくるということです。授業では話を聞き、習うことも多い。話を聞き逃すとわからなくなります。考える、実行する、調べる、発言するなどさまざまに行動をおこしますが、嫌々参加するのと積極的に取り組むのとでは、学習の効果も結果も違ってきます。
 たとえば、これから算数の授業ですが、35-□×3=8の求め方を習います。この解き方が今日の授業中でわかる、できるようにすることです。その日、その場でわかること、できることが大切です。聞き逃してわからない、後でやる、は効率が悪い。わからない、できないは積み重なります。授業に集中して参加すること、授業時間内ですませることが、みなさんの能力や学力を伸ばす最も効率のいい学習になります。□を使った式は、中学校でXを使った方程式になります。先取りした学習より、いま、小学校で習ったことがちゃんとできるようにすることが、次の段階の準備になります。
 みなさんは大人の入り口に来ています。将来への期待とそして不安も抱く年齢になってきました。対友人、対先生、対親といった関係で思い悩むこともあります。中学に進み、部活動をすれば、多くの時間を使います。行動範囲も広がり、いろいろなことも経験します。学習時間を確保するのがますます難しくなります。だから、授業になれば、そのとき、いま、やっていることに集中して取り組むことです。最適で有効な学習の仕方になります。
 みなさんは学校の授業に楽しく参加していますか。6年生の授業数1015のうち、国語と算数が各175です。理科と社会が各105、道徳、特別活動が各35、総合的な学習が70、教科になった英語も70、音楽と図画工作が各50、家庭が55、体育が90です。どの教科も好き嫌いをなくし、苦手と決めつけないで、なぜ、どうしてと興味をもって授業に臨みましょう。どの教科にもそれぞれのおもしろさ、醍醐味はあります。前向きになって参加したほうが頭に入ってきます。興味をもって参加することが、あなたの授業を楽しくしてくれます。
 音楽、家庭、図画工作、体育は実技教科と言われます。実技ですから楽しんでやればいいのです。音楽は本来、心を弾ませてくれます。表現することは楽しいのです。料理を作る、絵を描く、物を作るなど、創作は、本来、楽しいものです。運動会で、たとえ、かけっこでビリになっても、いいのです。たくさんの人に見られているなかでハラハラドキドキしながら一生懸命に走ることが、あなたにとって貴重な経験になります。大人になったら、やろうと思ってもなかなかできないのです。運動会も5785の授業数にカウントされます。
 授業を楽しむ秘訣は、他人と比べないことです。表現がうまくいかなくても、料理がまずくても、かけっこがビリでも、他人と比べず、一生懸命になって取り組み、楽しむこと自体がみなさんの成長の糧になります。小学生のときしかできないことなのです。学校は集団生活ですが、人と比べるところではありません。一人ひとりの能力や学力を伸ばすところです。わからない、できないから学校に通っているのです。
 これから道場の算数の授業です。授業には興味をもって、自ら参加するという意志で授業に臨みます。授業の受け方、聞き方、参加の仕方、ノートの取り方、宿題のやり方など、道場の学習の仕方を学校の学習に活かしてください。そして、どんな授業でも、いま、やりきること、楽しむことです。

西郡学習道場代表 西郡文啓


🌸著者|西郡文啓

西郡文啓 1958年生まれ。県立熊本高校卒業。高濱代表とは高校の同級生、以来、小説、絵画、映画、演劇、音楽、哲学等、あらゆるジャンルの芸術、学問を語り合ってきた仲。高濱代表が花まる学習会を設立時に参加。スクールFCの立ち上げを経て、花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として西郡学習道場を設立する。2015年度より、「地域おこし協力隊」として、武雄市の小学校に常駐。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。

西郡コラムカテゴリの最新記事