【78】その輝きはあなたのもの
花まる学習会の授業にて、月に1回ペースで開催している『大会』。テーマに沿った数々の学習ゲームに、クラスの仲間と協力、相談して取り組みます。協調性を養うとともに、自分の知識や学習の幅を広げる、特別授業です。
7月は、国語大会を開催しました。漢字や言葉を使ったゲームの中に、『輝いている漢字はどれだ!?』というゲームがありました。複数の漢字の中から、他の漢字と異なる漢字を一つだけ探すゲームです。例えば、「右、加、苦、左、器…」なら「『口』が入っていないから、答えは左!」。「小、賞、周、笑、章…」なら「読み方が『ショウ』でないから、答えは周!」と言った具合です。
その中に、以下の問題がありました。
「『土・下・上・千・三・川・工・人』の中から、一つ異なる漢字を探そう」
皆さん、答えはおわかりでしょうか。正解は「人」です。理由は、「他の漢字は画数が三画だが、人だけ二画だから」です。この問題を4~6年生クラスで出題した際、大半の子が正解しました。そのときは何事もなく、次の問題へと進んでいきました。
しかし、大会の終了後、4年生女子のUちゃんが、私にその問題用紙を見せながら聞きました。
「先生、この答え違いますか?自信あったのだけど…。」
そこに書いてあった答えは「工だけ、2年生の漢字」。
Uちゃん曰く、「工は2年生で習う漢字で、他の漢字は1年生で習う漢字。」とのこと。それを聞いた子どもたちが、にわかに騒ぎ出します。
「それ覚えているの、すごくない!?」
「言われてみれば、そんな気がする!」
「ちょっと調べてみようよ!」
と、口々に話し出したので、『小学漢字 1026字の正しい書き方』で調べてみました。すると、確かに…。工は2年生で習いますが、他の漢字は1年生で習う漢字です。私や講師含めて、その場にいた一同が、驚きと称賛の声をあげました。「すごい!よく覚えていたね!」
「これだけで、MVPものだよ!」
私は、Uちゃんに伝えました。
「模範解答には画数しか書いていない。問題を作った人も、多分それには気づいていないよ。それを見つけたことは、本当にすごい!」
Uちゃんは、今まで漢字学習を頑張ってきました。花漢の特待合格や合格を続け、この6月の花漢で、5年生1学期相当の6A級に合格しました。毎回花漢に向けて一生懸命に勉強し、花漢の日は「先生、今日花漢だよね!」と、気合十分の表情で教室にやってきます。一方で、一つひとつの行動が周りの子より遅れてしまい、学校などで苦労することもあるようです。その彼女が輝けるものが、漢字学習です。私は常々「Uには漢字と言う得意で熱中できるもの、一生懸命やれるものがある。それは素晴らしいことだよ。」と伝えてきました。今回もそれを伝えて、彼女が別解を見つけたことを称えました。
弊社代表の高濱も、「周りの大人や子どもたちの『配慮やお世辞ではない、心からの称賛』が、子どもの心に残り自信になる。」と、講演会で話しています。子どもたちや私に称賛されたUちゃんの表情。驚きと照れくささが混じり、私たちの言葉を消化するには少し時間がかかりそうでした。ただ、この出来事や言葉が心に刻まれ、彼女の自信につながると信じています。
ところで、このゲームの名前は、特徴の異なる漢字を『違う漢字』『仲間外れ』という言葉でなく、『輝いている漢字』としています。他者との違いを認め合い、他者との違いをその子の輝きだと捉える作者の思いがあらわれていて、私も非常に共感しました。
そのゲームで、正に輝きを見せたUちゃん。私たちにできることは、Uちゃんや子どもたちの輝きを見つけて言葉にして伝えることだと、改めて感じた出来事でした。子どもたちがそれぞれの輝きを見せて、自信につながる場になるよう子どもたちと接して、「あなたのその輝きが、素晴らしいものだよ。」と、伝えていきます。