【66】HITはなんのためにするの?
窓に打ちつける雨音を聞きながら小学生クラスのHIT(習熟度をはかるテスト)・花漢の採点を終え、一人ひとりの答案に目を通しているところです。テスト中に子どもたちが一生懸命に取り組んでいることは重々承知ですが、テスト用紙に書かれた字や図や思考の過程を残している様子を見ると、あらためて長時間よくがんばったなぁと胸が熱くなりました。
計算、算数の文章題、転写(高学年は国語)、精読、思考力問題で構成されたHITをおこなう際は子どもたちにこのように伝えています。「HITは花まるでやってきたことが問題にでます。いつもは困ったら先生に助けてもらっているけれど、今日はテストだから自分の力でどこまでできるか試してみる日なんだ。できない問題や分からない問題が出てくることもあると思うけれど、次できるようにすればいいからへこたれなくていいよ。でもあきらめないで向き合うことは大事だよ」と。テストの最中、頭を絞ってもどうしても太刀打ちできず悔し涙を流す子も何人かいました。それでも投げ出さずに、まずは最後までやり抜こうとする意志があるだけでも立派なことだと思います。
Hちゃんは3年生の時に受けたHITで算数の文章題に課題があることが発覚しました。普段の授業では適度に講師にヒントをもらって取り組むことが多く、自分で進めることに不安を持っていました。3年生からは四則計算が勢ぞろい。混乱しやすい傾向があるのは確かです。計算力はあるけれど、文章から正しい立式ができなかったため、後日教室に来てもらいHITで解けなかった問題を特訓することにしました。いわゆる「補習」ですから、自分ひとりだけ呼ばれたことに最初はショックを受け「行きたくない…」と気分が落ちていました。終わった後にお母さんとランチをする約束をしてもらい励まされながらなんとか教室に来てくれました。(ちなみにこうした補習で個別指導する際は、その子が来た時に「あなたは今日●番目の子だよ」と伝え、呼ばれた子は他にもいて順番に見ているだけだと安心してもらうようにしています。)
「Hちゃん、花まるはなんのためにテストをしているか知っている?」解きなおしに入る前に、こう聞きました。
「できるところ、できないところを知るため」毎回のHITで伝えてきたからこそ、Hちゃんも目的は分かっていました。
「できないところが分かるとショックだし、向き合うのがしんどいなと思うかもしれないけれど、これができるようになったらHちゃんはレベルアップするよ!」と先に思いを伝えると、Hちゃんも柔らかい表情に変わりました。Hちゃんの帰宅後、お母さまからメールがきました。「行く前は嫌々だったのに、行ってよかったー!と言っていて安心しました。」向き合うまでは怖くて仕方ないけれど、いざ突入してみると意外と大丈夫だった、という体験をくりかえし、逞しくなっていくのでしょう。
できないところ、間違えたところに素直に向き合うのは勇気がいることです。「なんでできないんだ」という悔しさを認め、理解できるようにするぞと再び学ぶ覚悟を決めないとできないからです。自分の現状を直視し、課題に真摯に向き合い続けたことでHちゃんは一年後、大きく成長しました。
現在5年生のHちゃん。あれほど不安のあった算数のテストは満点でした。また、花漢のテストでも自分で練習の計画を立てて毎回合格を勝ち取っています。テストの結果には普段の自分のありのままの様子(実力)が表れるからこそ、Hちゃんは普段の授業をおろそかにしません。課題は抜け漏れなく必ずやり抜き、分からない箇所は必ず質問してから帰っています。何より、テストでできない箇所が多くても「できるようにしていこう」と責めずに受け止めてくれる大人の存在こそが大きいと感じます。
保護者の皆さまと花まるで評価の扱い方に気を付けながら、お子さまがレベルアップする方法を模索していければと思います。