【59】ママのご飯が世界一

 今年の夏もサマースクールに参加してきました。無事に終えられたわけですが、本当に多くの方々に支えられました。ありがとうございます。私は、川遊びの国、サムライの国、秘密基地作りの国にそれぞれ参加してきました。川でたっぷり遊んだり、刀を振り天下統一を目指したり、ひたすら基地を作ったり。どれも特色のあるコースで参加している私まで楽しんで過ごしてきました。

 今年のサマースクールは1年生E君との出会いで幕を開けました。上野を出発し、約3時間バスに揺られて、新潟に向かいます。10分ほどかけて関越トンネルをくぐり抜けたときに広がる景色は何度見ても圧巻。遠くに見える山脈、きらきらと輝きを放つ川。「世の中、いろんなものにあふれているけれど、これが一番の贅沢だと思うな~」とつい、子どもたちに話してしまいました。宿に到着したらすぐに遊びに行けるように次の行程の準備物を伝え、無事到着。荷物を部屋に持ち込み、お昼ご飯タイムを迎えました。お腹を空かせた子どもたちは嬉しそうに、お弁当を広げ始めます。黙食の約束をしていたので、私も廊下を歩き各部屋の様子を見回っていました。唐揚げや、ミートボール、おにぎりやサンドイッチなど家から届いたいい匂いが廊下に漂っています。「エネルギーをチャージして、たくさん遊ぼうね。」と心の中で思っていると、ある部屋から、こんな声が聞こえてきました。「うっ…うっ…うぅ…!」どうしたのかと思うと、一年生Eくんのようです。出発してからバスの中でも変わった様子はなかったのでどうしたのだろうと声をかけました。「E、どうした?気持ち悪いとか、どこか痛いとかある?」と聞いてみても、一向に返事はなく、俯きしばらく泣いているEくん。「落ち着くまで一緒にいるから焦らなくて大丈夫だよ。Eが話したくなったらビンゴ(野外体験中の私の呼び名です。)に言ってね。」と伝え、数分隣に座って居ました。少しずつ呼吸が整うEくん。これからサマースクールが始まるというところで出鼻をくじかれるようなことがあっては…と思い、Eくんの言葉を待ちました。やっとの思いで口を開いたEくんは、こう話してくれました。

 「ご飯が美味しい…。ママの作ってくれたお弁当が美味しくて…Eは、ママの作ったものしか食べられないから今日の夜ご飯から何も食べられないかもしれない。もう…がえりだい!(帰りたい)」

 ずきゅん!なんとまぁ…!私の心は一瞬でEくんに掴まれてしまいました。「そうかそうか。Eはお母さんが大好きで離れたくない!って思っていたけど、ここまで頑張ってきたんだね。よくやったよ。それだけEくんを想ってくれるお母さんは優しいんだね。それに気づいているEも優しいんだね。どうしても寂しくなったらビンゴがずっと隣にいてあげる。せっかく来たし、今日の夜までは頑張ってみる?」「うん、わかった…」とEくん。その後も何度か私のところでパワーをチャージ。活動、チャージ、活動、チャージを繰り返し、夜を迎えました。たくさん遊びお腹が空いたのか宿のご飯ももりもり食べたEくん。最終日には、友達と肩を組んで、帰路につきました。

 野外体験に限らず、「親元を離れる経験」を通じて多くのことが経験できます。自分で何とかするしかない環境が、子どもたちを逞しく育てるのです。少し気が早いですが、Eくんが雪国スクールに申し込んでくれるかなと密かに期待しています。

 

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