【48】正しさと美しさ

 「なんでルール(規則)って守らないといけないの?」
と子どもたちに聞かれたら皆さまはどうお答えになりますか?「ルールを守るって大事だから」「ルールを破ったらいけないから」「いや、理屈抜きに守るものだから」答えは1つではなくいろいろあるでしょう。ありがたいことに、社会に出てお金をいただく立場になってから、それに対する答えを多くの人に教えていただきました。ある人はこのように教えてくれました。「信用を勝ち取るため」。また、ある人はこう教えてくれました。「ルールというのはみんなの安全、安心を保障するもの。例えば交通ルール。あれがあるから安心して車を運転したり歩行したりできる。もし、それがなくてもみんながモラルのもとに安心安全を保障できるのならルールは要らない。」ちなみに私の答えは「ルールを守ることで心の筋肉がつくから」です。大変な時、嫌な時がこれからの人生当然出てくる。その時に、人のせいにしたり環境のせいにしたりするとそこに幸せはやってこない。そうでなく自分はどうするかと他人や環境ではなく自分に矢印を向ける。その練習をしているんだよと私だったら伝えます。

 つい先日2年生のYちゃんのお母さまにご連絡をいただきました。Yちゃんも学校の授業で「ルールを守ること」について考えたそうです。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 先日、娘の担任の先生との面談で以下のようなことを伝えてもらいました。娘が道徳の授業で「なぜルールを守るのか」の問いに対して「ルールを守るのが楽しいから」と答えたそうです。お友達の中にはキョトンとした方もいたそうで「どうして楽しいのか?」と先生が深堀りしたそうです。そうすると
 「ルールを守って過ごすと、自分もお友達も気持ちよく過ごすことができるから」
 「ルールを守ることで自分が成長できるのが楽しいから」
 と答えたそうです。ルールを守るという大事だけど窮屈そうなことを楽しいと捉えた娘の発想、思考に私もとても驚きました。私にはできない考え方だと思いました。何事も前向きにポジティブに受け取る娘だとは思っていますが、こういった感性を娘がなくさないように子育てをしなくてはと強く思った次第です。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 なぜ?と聞かれたら「〇〇だから」と答えるのが国語の基本です。そうすると、どうしても思考で答えを出しがち。「信用を得るために」「こういう力が身につくから」と言ったようにこういった得があるから、また逆に損をしないためにという損得論に帰結しがちです。ただ、Yちゃんの答えは少し違います。「ルールを守るのが楽しいから」そして「自分もお友達も気持ちよく過ごすことができるから」。見つめているのは未来の損得ではなく「心」。しかも、Yちゃんの答えには自分の心だけでなく相手の心も大切にしたいという思いがあふれている。それゆえ「正しさ」も感じましたがそれ以上に「美しさ」を感じました。「大事だと思っているけどできない」そういう経験は誰しもあると思います。それはつまり、人間には心があり、それに従って動いているから。ただ、その万人が共通して持っている「心」に焦点を当てたときに心と心が共振する。だからこそYちゃんの答えに「納得」ではなく、「共感」したのだと思います。年を重ねるにつれ、損か得か、効率的か非効率かなど未来を想像し頭の中だけでついつい答えを出そうとする自分の存在に気づきます。その結果、なかなか答えが出せなかったりもします。ただ、そうではなくいたってシンプルで答えは「心の中」にある。単純にそれが「気持ちいいか気持ち悪いか」「楽しいか楽しくないか」。「いい悪い」よりも「好き嫌い」で生きている子どもたちだからこそ、何気なく発した一言にはっとさせられます。

 

まえへ  つぎへ