【29】自分をさらけ出せる場所

 むずかしそう なぞぺーめいろ あっできた!

 先日、小学生クラスで行った国語大会のゲーム、花まる川柳で1年生が書いた作品です。川柳とは、あるテーマについて、自由に思ったことや感じたことを五七五のリズムで書いたもの。今回のテーマは花まる学習会、リズムは五七五(字余り・字足らずもあり)で、好きなことを自由に書いてもらいました。
 普段から作文を書くときに、「あなたが思ったことや感じたことを、そのまま書いていいよ」と伝えています。すぐに書き出す子もいれば、なかなか書き出せない子もいて、時間内で書き終わらないこともあります。今回の花まる川柳をみんなが書けるかなと少し不安なところもありましたが、それは杞憂に終わりました。

 花まる川柳を書いている時、子どもたちの作品を読み上げていきました。

 はこしまい さいこうきろく うれしいな
 たんぽぽの けんていまいかい どきどきだ
 サボテンで 3分切れない 悲しいな

 すると数名から、「楽しいことだけでなく、なんでもいいの?」と質問がありました。ゲームの説明の時に、「嬉しい、楽しい、悲しい、大変なこと、なんでも自由に思ったことを書いていいよ」と伝え、毎回の作文でも同じようなことを伝えています。それでも子どもたちの中では、「楽しいことや嬉しいこと、頑張ったことなどを書かないといけない」と思っている子が一定数います。学校でいいことを書くように言われているのかもしれませんし、悲しいことやできないことを書くのが恥ずかしいと思っているからかもしれません。

 しばらく子どもたちの様子を見ていると、書いては消してを繰り返している子、ひらめいたように一気に書いている子、言葉を選んでいて書けていない子もいましたが、共通してどの子も楽しそうに笑顔でいることに気がつきました。高学年になると以下のような、できないこと、不安に思っていることなども書いている子が増えました。

 算数で 意味わからない 公約数
 こわすぎる ヒットの前が こわすぎる
 がんばろう いつも忘れる 宿題を

 しかし、自分の思いに噓をつかず正直に表現できた嬉しさや、心の中をさらけ出すことに気持ちよさを感じたからでしょう。低学年と同じく楽しそうにしており、すっきりとした表情をした子もいました。また、最後にチームの代表作品を決める時も、子どもたち同士で作品を隠すことなく見せ合い、「そうそう!わかる!」など、お互いの作品に共感をしながら選んでいました。

 この様子を見て、私は内心とても嬉しく感動していました。学校だと友だちに何か言われるのが恥ずかしい、馬鹿にされるから嫌だと言って本音が出せないという話も聞きます。今回の国語大会を通して、教室が子どもたちにとって、素直に気持ちをさらけ出せる場になっていることが改めて実感できたことは、何よりも嬉しいことでした。

 赤ちゃんを見ていたらわかるように、新しいことを学ぶことやわからないことを理解することは、本来楽しさや嬉しさに繋がっているはずです。それが成長とともに、物事を客観的に見ることができるようになり、恥ずかしく感じたり、〇〇でなければならない、できるはずがないといった固定概念が作られ、やる前から諦め挑戦することを避けるようになることもあります。

 計算や漢字、作文や文章題、図形問題など、「自分は不得意だ」と感じている子もいます。それでも教室では、子どもたちが自分と向き合い、苦手なことから逃げずに挑戦し夢中になっている場面を毎回見かけます。それは私たちの声かけだけでなく、子どもたち同士で声をかけ合ったり、お互いに頑張っている様子を見たりする中で、やる気を高め合い、できない自分もさらけ出し、安心して目の前のことに集中できる場所をみんなで作り上げているようにも感じます。  

 ご家庭では保護者の皆さまがわが子のすべてを無条件で受け止め、子どもたちにとって安心できる場になっていると思います。教室も保護者の皆さまや子どもたちにとって、いいときだけでなくすっきりしないことや困ったことがあった時、受け止められる場になれたらと思っています。

 

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