【10】とびきりの自信

 5年生の女の子Mとのお話です。

 Mは要領がよく柔軟な考えができ、Sなぞぺー(高学年の思考力教材)は得意な反面、宿題や漢字などコツコツ積み重ねて成果を得る、という分野に苦手意識があるようでした。
 7月2日、彼女がサボテン(計算の宿題)を2週続けて忘れたことがきっかけでした。前週に「必ず持ってくる。」と約束していたこともあり、その日の授業終わりに「取り組むこともそうだけれど、人との約束を守るっていう信頼にも関わる。それから、宿題をすることそのもの以上にコツコツできる力はMが大人になったときに必ず役に立つよ。」という話をしました。
 そこから毎週Mとの時間を設け、ときにはMのお母様ともお話しをしながら「1日1ページ、3分では解ききれないので家では5分で計測し、1ページあたり半分を解ききること。」を目標にし、夏休みに入りました。

 7月末から8月中旬まで数週間授業が無い期間での宿題の習慣化。夏休みの宿題もある、遊びたい気持ちとも折り合いをつけなければならない。ご両親も忙しく家で一人になることも多い、私もサマースクールへ出向いてなかなかサポートすることができない。彼女の“自分との戦い”が始まりました。
 彼女は果たして宿題をやってこられたのか、どきどきして迎えた夏休み明けの授業…。普段と変わらない様子で彼女がやって来ました。「サボテン、頑張った…?」と聞くと「うん、やってきたよ。」といつもの調子でテキストを差し出しました。開いてみると、どのページも目標の半分どころか全問解ききっていました。
 私が驚いていると「意外と簡単だった…笑」と少し恥ずかしそうに彼女が言いました。そこから“とびきりの自信”を得たのか、授業内のサボテンへの取り組む姿勢もよくなっていきました。

 

 話は変わりますが、私が4年生のとき漢字の100問テストがありました。普段は穏やかな母が漢字の問題用紙を大量にコピーし本気モードになっていました。なんだか少し怖かったのを覚えています……。
 コツコツした作業に苦手意識があり(毎日やっても将来使わないよ。)(漢字なんて使わなくたって…。)と思っていた私でしたが母の応援もあり、そこからテスト当日まで兎に角漢字と向き合いました。
 結果は100点、大きなテストで満点を取ったのは生まれてはじめてでした。友人や担任の先生に褒められ、(漢字得意!!)と有頂天でした。なによりも母から褒められたのがとても嬉しかったのを今でも鮮明に覚えています。そこから現在に至るまで、私は漢字が大好きです。

 話を戻します。サボテンは9月から新しい単元に入りました。先日のMはあと一問…、というところで3分が経過すると、とても悔しそうにしていました。それでも「私、最近サボテン得意かも!」とも言っていました。全力で毎日頑張っている彼女だからこそ生まれる前向きな感情だと思います。
 何事も要領よくこなす力は大事ですが、ときにはコツコツ努力を積み重ねていく場面も必ず現れます。そこで勝ちとった“自信”は才能や運で得た自信以上にとびきりの自信になるのだ、と強く思います。

 これからの人生、漢字、宿題、勉強に限らずコツコツ努力を積み重ね、心の底から“とびきりの自信”をもって生きていける。みんなにはそういった経験をたくさん積んで欲しいです。

 家庭のみでの子育てが大変な昨今、花まる教室がそんな経験の一助になれればと思います。

 

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