【140】好きだなぁ
私が大学生の頃、家族とともに群馬県みなかみ町にある「たくみの里」という道の駅へ行きました。ここには、繭から糸をひいて繭細工をつくる体験ができる工房があったり、和紙作り体験ができる家があったりと、様々な体験施設が目白押しでした。
その中で私たちが選んだのは、ドライフラワー工房です。名前の通り、ドライフラワーを使った創作体験を通し、ハーバリウムやリースなどを作ることができる施設です。私は何を作るか迷いに迷い、1辺が10センチほどの正方形の形をしたウッドボードを基盤として、ドアプレートを作成することに決めました。
どうアレンジしようかと悩むこと約10分間。ウッドボードが正方形ということで、1つの辺に1つの季節を当てはめ、4つの辺を使って「春夏秋冬」を再現することに決めました。春を再現できるピンク色のドライフラワー、冬を再現できる松ぼっくりや白いドライフラワー、というように季節を感じるものを探しに行きます。そのお店には、多種多様な素材があり、ドライフラワーはもちろんのこと、木の実や木の枝など、自然味が溢れているので、探している時間はとても心地の良いものでした。選んだ素材を、ホットボンドを使ってウッドボードに付けていきます。実際に付けてみると、想像以上に素材の色が強調され、色鮮やかかつ自然の奥ゆかしさも感じられるドアプレートが完成していきます。
それを近くで見ていた母から、「そのドアプレート、色合いきれいでいいね!」と声をかけてもらい、さらに、ハーバリウム作りに勤しんでいた姉からも「そのアイデア面白いよね~」と言ってもらえました。私は、照れくさいような、こそばゆいような気持になりましたが、悪い気はせず、心の中がぽかぽかと温かくなりました。
これまでの人生で、自分の作った工作作品や描いた絵が日の目を浴びることはありませんでした。創造性や美的センスを疑い、自分の作品をなかなか好きにはなれませんでした。しかし、母や姉から自分の作った作品を褒めてもらった私は、そのドアプレートが一気に好きになり、お気に入りの作品として社会人になった今でも大切に部屋の中に飾っています。それをきっかけとして、自分の描く絵や作った作品にも自信をもてるようになり、絵心がないなりに子どもたちと全力で楽しみながら絵を描いたり、様々な作品を作り出したりすることを「好きだなぁ」と思えるようになりました。
花まる学習会の年中クラスは創造性を育むため様々な作品作りに挑戦します。年長クラスでは、思考実験で自分なりの答えをつくりだします。小学生クラスに上がれば、作文に自分の想いを言葉にします。すべて子どもたちが自分自身で考え作り上げたものです。
「この線を描いたのがいいひらめきだね。」
「この文章のこの表現がステキだね。」
「この作品が好きだなぁ」
子どもたちの作り上げたものに対してプラスの言葉を伝えていきます。それによって、子どもたちが自分の作品に対して、作っている時間に対して「すきだなぁ」と思える。これこそが自己肯定感に繋がっていき、何かにチャレンジする意欲に繋がります。
私の感じた「好き」を子どもたちに伝え、その「好き」が子どもたちを通して連鎖し教室中を埋め尽くしていく。自分を「好き」になる、もっと「好き」になる空間を作るために、今日も授業をしていきます。