【124】「本気は楽しい!」の本気とは
皆さま、今年の夏はいかがでしたか。3年ぶりの行動制限が緩和された夏休みということで、子どもたちも会うたび「沖縄の海最高だった!」「初めて大阪に行ってきたんだ!」と嬉しそうに思い出話をしてくれました。
私自身今年の夏は、花まる学習会の教室・サマースクール・スクールFC(進学塾部門)の3つを中心に駆け抜けた夏でした。
中でも、サマーチャレンジ(以下サマチャレ)での一場面が印象に残っています。サマチャレとは、「本気は楽しい!」をテーマに、4日間の日帰り勉強合宿をスクールFCの校舎で行うものです。私はサマースクールに参加した関係でサマチャレ2日目から参加しました。
初日を終え、2日目をどう迎えるのか、私も期待と不安を抱えながら校舎に向かいました。校舎につき授業前の準備をしていると、担当する中3の女の子(Aさん)が私に「先生、本気ってなんですか?」と聞いてきました。
確かに「本気」は、言葉以上に体現すること、それ以前に感じることが難しいものです。
旅行から帰ってきてしばらく経ってから余韻に浸るような感覚と同じで、何かに取り組んでいる最中に「自分はがんばっている!」と実感するというよりは、その日一日が終わったときや、一か月が終わったときに振り返って初めて「あ~あのとき私はがんばっていたな」と気が付くものなのです。だから、今本気かどうかの答えは後から出るものであり、今本気かどうかはその場ではわからないといっても過言ではありません。
私はAさんに、与えられたこと以上のことをする意識をもってほしいという思いから「とにかく今は、何にがんばっているかわからないくらい一生懸命になることが大切だよ」と伝えました。
この日からAさんの意識は変わりました。朝一番乗りで教室に入り、早速英語の例文を覚えだし始めるAさん。途中トイレに行くときもテキストを片手に持ち歩き、授業中も「先生、今日は雑談いらないです。その分を自学の時間にしてください!」と自分で時間を生み出し、寸暇を惜しんで勉強する姿はまさに受験生の鏡でした。そこから、クラス全体も主体的な生徒が増え、一分一秒を惜しまずに取り組む熱気あふれる雰囲気へと変わりました。
4日間を振り返る最終日の作文で、Aさんは「隣にいる子はライバルでもあるけれど仲間でもある。受験期を共に過ごした仲間たちは心強い。できなくて悔しいこともあったし、自分の不甲斐なさと向き合いたくないときもあったけれど、それだけ本気になれた私を誇りに思いたい。」
と書いていました。私はこの作文を読んだときに、この4日間でどれだけ暗記したか、点数が伸びたかといった定量化できるもの以上に大切な心の成長を感じました。
これから先は、受験が近づく焦りと日の短さから感じる不安が重なり、徐々に校舎内がピリピリとした張り詰めた空気感に変わっていきます。そんなとき、今回のサマチャレの経験を思い出し「あのときあれだけがんばった私がいるのだから、がんばれないはずがない」と思えることができれば、それだけでこの夏の大きな収穫です。
まずは自分で自分を認めてあげること。それが後になって「本気だった私」として蘇ってくるものなのです。
受験まで残り半年を切りました。スクールFCが掲げる「幸せな受験」の実現に向けて、一人ひとりと真っ向から向き合い続けてまいります。