【122】仲間のために
花まるの夏、サマースクールが今年も無事に終了しました。サマースクールでは毎年胸が熱くなるようなドラマがたくさん誕生します。今回のコラムでは、私が高濱先生と行く修学旅行~無人島編~で出会った6年生のHくんのエピソードを紹介します。
Hくんは盛り上げ隊長のような存在で、彼の周りは常に笑顔が溢れていました。そんなHくんですが、笑顔が消えた瞬間が1度だけありました。無人島滞在の2日目。この日は自分たちで食料を確保するというサバイバルな1日でした。お昼頃、地元の方のご厚意で、船釣りをすることに。3班に分かれ、1班ずつ釣りに出発。Hくんは3班なので最後に出発することになりました。行く前から「何が釣れるのかな~」とわくわくしていたHくん。先に行った2班が大きな魚を釣っているのを見て、Hくんの期待はより高まりました。
いよいよHくんを乗せた船も釣りに出発。さっそく釣り具を持って、「大物を釣るぞ~!」と気合十分でした。しかし、全く釣れる気配がありません。他の場所に連れて行ってもらいましたが、そこでも何も収穫なし。どんよりした空気が漂う中、無人島へ帰りました。無人島では仲間たちが手を振って待っていてくれました。
「どうだった!?釣れた?」と聞かれたHくんは黙って首を横に振っていました。
Hくんの心も、Hくんの班もズーンと沈んでしまっていたその時、無人島プロジェクト責任者のカトパンに「魚取りに行くか!」と声をかけられたHくん。「え!魚捕まえられるの!?行く!」とHくんは悩む暇もなく即決。急いでバケツを握り、カトパンとともに魚を捕まえに行きました。
しばらくして帰ってきたHくんのバケツには、小魚がいっぱい入っていました。「これでごはんが作れるぞ!」と目を輝かせて、すぐに小魚を焼き始めました。Hくん特製の焼き小魚が完成すると、「ねぇ!これおいしいからみんな食べに来て!」と、同じ班の子だけではなく全員に声をかけました。
自分の班だけ食べられないかもしれないという状況の中捕まえてきた魚は、誰よりもHくん自身が一番食べたかったはず。そんな中でも周りの人に自分がとってきた魚を振る舞うHくんを見て、心が温かくなりました。Hくん特製の焼き小魚はあっという間になくなりました。すると、Hくんの小魚をもらった子たちが「H、これも食べていいよ!」とどんどんHくんに魚料理を持ってきていました。
心がくじけそうになっても、目の前にあるチャンスをつかみ、喜びをみんなで一緒に分かち合える。「仲間が喜ぶことが嬉しい」と話すHくんを見て、彼の周りに常に人がいる理由が分かりました。
教室でも問題を解くのに苦戦したり、思うように宿題が進められなかったり…心がくじけそうになる場面はたくさんありますが、周りを見れば仲間がたくさんいます。一人で頑張りすぎず、仲間を頼ることであっという間に解決できることもあるでしょう。子どもたちがお互い支えあっていけるよう、サポートしてまいります。