【121】伝え方
年中コースでは毎授業思考実験を行っています。思考実験とは身の回りにあるものを実際に手を動かして触り、新しい発見や色々なことをするのが楽しい気持ちを育てます。
年中のT君は絵の具を使うのがあまり好きではないです。というのも年中授業「色水」を行った時に
「先生!僕やらなくていい。見ているだけでいいよ」
と言っていました。T君は普段から思考実験を全力で楽しむ子だったので、とても驚きました。なんとか絵の具を使用しますが、手に少しつくたびに
「もう終わりでいい!手を洗う!!」
と言いました。私はきっと手に絵の具がつくのが嫌なのでしょう。絵の具を使った思考実験もやってほしいと思い
「あれ?T君が入れた白色Yちゃんと同じなのに色が少し違う!!」
するとT君は笑顔で
「僕の少ししかいれていないからだよ!」
と言ったので、私は
「違う色も少し入れたらT君のオリジナルの色ができるかも?入れる?」
このように伝えるとT君はすかさず頷き新しい色を混ぜました。
「世界に一つだけの色だね!」
と私が伝えるとT君はその日一番の笑顔になり、
「次は黄色入れたい!」
と元気よく言いました。
これは年中の授業で初めて絵の具を使用した時のお話です。絵の具を使うというと子どもたちは大喜びで興奮するのですが、全員がそうではありません。少なくともT君のようにやりたくないという気持ちがある子もいます。ただ
「やろうよ!楽しいよ!」
と押し付けるのではなく視点を変えたり伝え方を変えたりするだけで子どもたちのやる気も変えることができます。
また大人が先頭に立って取り組む様子を見せるのも大事です。「手で絵を描く」という思考実験ではその名の通り、手に絵の具をつけて紙に描きます。レクチャーをする時、私は絵の具を自分の手に出した瞬間に両手いっぱいに絵の具をなじませました。
子どもたちが手にいっぱいに広げると
「手がペチペチして冷たーい」
と大喜び。子どもたちは拍手をするのですが、いつもと違う音が鳴って何度も叩いていました。またパチパチと手を叩いていると絵の具が乾いてきて
「絵の具が出なくなった!」
子どもたちは、絵の具が乾いたことを知ることができました。子どもたちが自分たちで発見したことです。もしレクチャーの時に私が嫌な顔をして絵の具を手に広げたり、少量しか絵の具を使用しなかったりしたら子どもたちも少量しか使わず新しい発見ができなかったと思います。
私たち大人が言葉にしてみたり全力で取り組んだりすることが重要だと考えています。大人が楽しそうにしていて羨ましい、私もやってみたい。子どもにはそう思ってもらえると、嫌なものが楽しい。楽しいものがもっと楽しくなります。
楽しく取り組むことができると新しい発見ができたり好奇心をくすぐったりすることができます。是非お家でもお声がけする際は保護者の皆さまも楽しみながら新しい発見を言葉にしてくださると幸いです。教室でも引き続き子どもたちがやりたい!と思えるよう声をたくさんかけてサポートして参ります。