【119】子の涙に始まり、親の涙で終わる
「いやだー、行きたくない!」
とバスの前でお母さんに捕まって、泣き叫ぶBくん。小学3年生ですが、まわりより体が大きいBくんは意地でもお母さんから離れないという気持ちでしがみついていました。彼は今回で2回目のサマースクール。以前も似たような状況だったので、母親からは『もう無理やりでもバスに乗せてください。』と言われていました。
「みんな待っているから、座席にいったん座って、考えてからもし嫌だったら戻ろうか。」
と言って、少し強引にバスに乗せました。
「座ったからいいよね、もう降りていいよね?」
と聞いていくるBくんに、
「サマースクールどんなこと楽しみ?今回で何回目?」
などと気を紛らわせるために色々な質問をしました。そうこうしているうちにバスは発車。
「降ろして!帰る!」
と少しの間だけさわいでいたBくんですが、3分ほどたつと、逆にワクワクしてきたようでした。バスレクでは、
「おれサマー2回目だから名前覚えゲームは最後でいいよ!」
など班の仲間を引っ張るほどに盛り上がっていました。ちなみに名前覚えゲームとはバスの中で子どもたちどうし名前を覚え、仲良くなるためのゲームの一つで、「○○くんのとなりの○○です。」のようにどんどん名前をつなげていき、タイムを競うゲームです。順番が最後に近づけば近づくほど覚える人数が多くなり難しくなります。ですから、最後は嫌がる子も多いのですが、自分から難しいことに挑戦しようとするほどの積極性を見せていました。
宿についてからも、
「おれたち仲間だよな!」
とチームを引っ張り、楽しそうにしていました。食事時には、
「あと何回ご飯食べたらお家に帰れる?」
など時折り寂しそうな言葉は出てきますが、涙を見せることなく楽しんでいました。
RIVER探検隊の沢登りで、大人ほどの壁を登る挑戦をするときのことです。他の子は2、3人のリーダーの手を借りて、壁を乗り越えていました。いよいよBくんの番。
「俺は手を借りずに行くよ!」
と言って、壁を駆け上がっていきました。ダッダッと勢いよく壁を走るBくん。あと少しというところで手をついてしまい、惜しくも自分一人であがることは出来ませんでした。しかし高い壁を自分で乗り越えようと挑戦する姿勢は、行きのバスの前で見せた姿とは大違いでとてもかっこいいものでした。
あんなに早く帰りたいと言っていたBくん。最終日には、
「なんかあっという間だったな。早くお母さんに会いたい気持ちもあるけど、もっとサマースクールやりたいし、まだまだここにいたいな。」
と口に出していました。集合場所で迎えに来たお母さんは、自信満々で帰ってきたわが子を見て思わず涙をこぼしていました。
「私からうちの子が離れても大丈夫かな。」と親としてと不安に感じている方もいるかもしれません。お子さま自身も最初は不安に感じるかもしれません。しかしサマースクールに来ていただければ、仲間との出会い、そして様々な経験、その中で子どもは必ず成長していきます。今年度のサマースクールももう少しで始まります。今年も様々な出会いや子どもたちの成長を見られることを楽しみにしています。