【118】リアルな体験を通じて
子どもたちと接していると、時折、私も知らない知識を持っていたり、新たな発見をしたりする場面を見かけます。そういった子どもの知識、感性はどのようにして身につくのでしょうか?
そこで今回は、ある生き物について話している2つのエピソードをご紹介します。
ある日、年長授業の「ひみつのしれい」でカエルのマネに挑戦しました。Aちゃんは「ゲロゲーロ!」と声を出しながら、ピョンピョンとカエルのようにジャンプしていました。「カエルは知ってる?」という質問に「うん!」と答えたAちゃんでしたが、さらに「見たことはある?」と聞くと首をかしげて考えた後に、首を横に振って「なーい」と言いました。
私はカエルを知っているのに見たことがないとは、どういうことだろうと不思議に思いました。なぜなら、群馬県で育った私にとって、子どもの頃から近所の田んぼや小川にはカエルがたくさんいて、夜には鳴き声が聞こえるほど、カエルや生き物が身近な存在だったからです。Aちゃんに詳しく聞いてみると、「テレビとか本で見た~」と言います。私は映像や絵の中でしかカエルを知らないということを聞いて驚きました。
そこで、「オタマジャクシって知ってる?」と聞くとAちゃんは先ほどのカエルと同じように「知ってる!」と笑顔で答えます。
しかし「じゃあカエルの子どもってなんだろう?」と聞くとポカンとした表情を浮かべ「ん?」と首を傾げていました。おそらくそれぞれを別々に見ていて、カエルとオタマジャクシがつながっていなかったのでしょう。
対して年中特別授業の外遊びでの一幕。自然の中を思うままに探索していて、水辺で何か生き物がいないか、探していました。そこでオタマジャクシを見つけると、「この前はね、カエルを捕まえたんだ!」と満面の笑みで教えてくれたBくん。普段から自然の中であそぶことが多いようで、木を見て「これはカブトムシが好きなクヌギの木~」と木の種類までも知っていました。Bくんは虫が大好きで虫取りをする中で、自然と覚えてしまったというのです。
本を読んだり、映像を見たりすることも、もちろんいいのですが、実際に体験したことを話しているときの生き生きとした表情や熱量は何にも代えがたいものがあります。
物事は聞いて覚えるよりも、体験する方がたくさんの発見があり、おもしろいと私は考えています。なぜなら体験したことは自分だけのものだからです。聞こえる音や触ってみた感触、抱いた感想、すべてが自分ごとになります。そして、それらが自分だけの学びになります。
私自身、今の自分の感性を形成しているのは幼少期の自然とのふれあいだと感じています。外で遊んだ帰り道、川のせせらぎを聞きながら、茜色に染まった空を眺めたときに自然の美しさを感じました。また、キラキラと輝く、川の水を見て普段の日常では感じることのない疑問やワクワクをたくさん感じたのを覚えています。
私はこういった自然の中で、好奇心を育ててもらい、自ら学ぶことが好きになりました。
子どもはもともと遊び、楽しむことの名人です。これから花まるの授業や野外体験を通じて、子どもたちに、自分で体験することの楽しさを伝えていきます。