【110】自分を奮い立たせるもの
4年生以降のコースに、通常コースとは違い動画学習システムを導入している『高学年plus』というコースがあります。宿題として動画を視聴して演習を行い、教室では確認テストを通して習熟度を把握します。
そんな高学年plusコースに通う5年生Hくんのお話です。月に初めて会ったときは確認テストに取り組みながら頭を抱えて涙目になっていたHくん。難易度の高い問題や、しっかりと覚えられていなかった問題に直面すると「もう無理だ」と落ち込んでしまいます。そしてその状況から抜け出すことができずにエネルギーを使い果たしてしまい、帰る頃にはもうヘトヘトです。確認テストの結果は不合格。再テストを受けることも多くありました。また、1日1ページの宿題であるサボテンをやり忘れることもあり、毎週のように教室に残ってサボテンに取り組んでいたのです。
Hくんに変化が見え始めたのは11月頃。サボテンはもちろん、他の宿題にもしっかりと取り組んで教室に来ることができるようになりました。そして確認テストが始まるギリギリの時間まで宿題のページを見返して予習。公式や大切なポイントを口に出しながら確認する姿がありました。それからのHくんは、頭を抱え悩むことがあっても自分で気持ちを切り替えて取り組み直すことができるようになり、なかなか一発合格ができなかった確認テストも次々と合格。きっとそのこともHくんの自信になっていたのではないでしょうか。そんなHくんの変化にはある理由がありました。
高学年plusでは、月に1回子どもと私の1対1で面談を行います。1年の最後の面談では、子どもたちと一緒に1年の振り返りを行い、次の学年での目標について話しました。Hくんとの面談で、「学力だけでなく、精神力も強くなったね」と伝えると「4月は宿題が多くて全然できなかったけれど、最近はちゃんとできるようになったから自信がついてきたんだ」と教えてくれました。そして変わったきっかけを聞いてみると少し悩んで「受験」と答えたHくん。校舎が綺麗な私立中学校を見たことがきっかけで、中学受験を考えた時期もありましたが、今のHくんの目標は少しでも偏差値が高くて綺麗な校舎の高校に行くことです。そんな彼の6年生になってからの目標は「居残りを減らす」こと。そのために宿題をしっかりとやり、再テストにならないように予習をすることで居残りを減らしていくと目標に掲げました。そして1年後、6年生の3学期には「居残りゼロ」がHくんの最終目標です。
そう目標を語っていたHくんが6年生になり3か月が経ちました。時々忘れ物をしてしまうことはありますが、居残りの回数は格段に減っています。以前のように頭を抱え込むことも少なくなり、自分と向き合い一生懸命に目の前の問題に取り組むことができるようになりました。11月頃から自分で目標を掲げて見違えるほど強くなったHくん。そんな彼なら6年生になってからの目標もしっかりとクリアしていくことができるでしょう。どんな6年生になって卒業していくのか、最後の1年を見守っていけることが今から楽しみです。
Hくんのように目標を持つことで、人は変わることができます。自分で自分を高め、それを周りの人に認めてもらうことで自信がつき、さらに変わることができるのです。花まるに通う子どもたちにも、なにかひとつ目標を持ってほしいと思っています。少し悩んだとき、立ち止まりそうになったとき、その目標が頑張る自分の支えとなるでしょう。私はこれからも子どもたちの目標達成に向けて一緒に走り続けていきます。
私が授業をするうえで常に意識している目標は、子どもたちに「今日の花まるも楽しかった!」と笑顔で家に帰ってもらうこと。「楽しんで勉強ができる」それがなによりも子どもたちが勉強を好きになるために大切なことです。だからこそ、「花まるが子どもたちにとって楽しい場所」となるように、私もこの目標の達成に向けて自分を奮い立たせていきます。