【108】子どもの心に刺さる大人の姿
先日のHIT・花まる漢字テストが終わった後、「国語は満点!漢字テストは合格だ!」と手応えを感じていた5年生のMくん。「絶対に満点!」と自信満々の様子。しかし返却されたテストは「あともう少し」というものばかりでした。自信満々だったMくんは、実は計画的な勉強はあまりできておらず、テスト当日、問題を解いた後の見直しもできていなかった様子。あと一問というのも、見直しをしたら合格になっていたものもありました。そして迎えたテスト返却当日、テーブル講師の木村さんとMくんとのやり取りを見ていました。
「先生もこんなに勉強して頑張ったのにあと少しで合格やってん!めちゃくちゃ悔しいわ!!」
実はこの日の授業前に「先生、テスト不合格やった!あと少しやったのに…!」と言いながら教室に飛び込んで来た木村さん。受けられたテストは、受検級が上がっていく、「花まる漢字テスト」のような珠算試験で、木村さんは「子どもの頃に合格した級を、教え子に越されそうで。だから負けないように頑張っています!」と意気込み、テストに向けて勉強をしていたとのことでした。「私のあと少しだったテストと、それまでの練習問題を持ってきたので、HIT・漢字テスト返却の際に子ども達に私の頑張りも見てもらいます!」と木村さん。その練習問題が山のような量で、一生懸命テストに向けて練習を積み重ねたことが誰から見てもわかるものでした。
今回のテストの点数、そして木村さんのこの言葉を受けたMくんは、言葉を発することなく、ずっとうつむいていました。本人も思いっきり泣き喚き、何かにぶつけたかったはずですが、木村さんの頑張りを知り、自分が計画を立てて勉強をしてこなかったこと、見直しを怠ってしまったこと、思い当たる節があり、自分自身を省みているようでした。
子どもがこのような時「もっと勉強したらよかったのに」「見直しをしなかったからだね」と過去のことにフォーカスして言葉だけで伝えてしまう大人がいます。子どもは反発をしてしまい、その言葉が逆効果になるケースもあります。今回はそのような伝え方ではなく「大人が頑張った姿」を見たことでMくんの中に響いたものがあったのではないかと感じました。
この一件から私は「大人としてどういう姿であるべきか」を考えました。「勉強した方がいい」「見直しをしよう」等はいくらでも言えますが、それが口だけになっていないかどうか、自問自答をしました。「大人は勉強しなくていいよね」教育の仕事をやり始めた頃、子ども達から言われた言葉です。今振り返ると、自分が口だけの大人になっていたのではないかと思います。自分が何か目標に向かって頑張っている姿を見せられているかどうか。「頑張りを見せる」だけではなく「目標に向かっている姿」が大切なように思います。言葉だけにならないように、子どもの心に刺さる姿を見せていける大人でありたい。木村さんの行動とMくんの反応から気付きをもらいました。