【100】仲間と人生を語る。
私は今回のサマースクールで初めて「高濱先生と行く修学旅行」に参加しました。6年生から中学3年生までの子が参加することのできるコースです。1日目は高濱先生の生まれ故郷でもある熊本県人吉市へと向かい、高濱先生が幼い頃に遊んだ球磨川で遊んだり、2日目以降は熊本城を見学したり、船に乗りながら野生のイルカウォッチングをしたりなど大自然や歴史に触れながら遊びます。
私が担当した子たちは10人で、そのうちの9人が6年生、1人が中学1年生でした。私はこのコースに参加する前は、6年生以上だからだいぶ大人びた子たちばかりが集まっているため、あまり全力で遊ぶことはしないのかなと思っていたのですが、いざふたを開けてみると全く違うことが起きました。
それは川に向かっている最中、川が見えた瞬間にある男の子が、
「うおおお!!川だああ!!」
とテンションが明らかに高まっていました。一人はこういう子もいるなと思っていた私でしたが、川遊びが始まるとほとんどの男子が全力で水をかけあったり、自然のウォータースライダーを楽しんだり、
「川最高!」
と声を高らかにあげている子もいたりなど、そこには大人だろうと私が想像していた6年生の姿はなく、サマースクールに参加した2年生ほどの子となんら変わりない姿がありました。また、宿に着くと布団を敷く際に思わず布団にダイブしている光景やチームの仲間同士であだ名を決め合っている姿など、サマースクールでは下の学年の子たちのお世話をしている6年生の姿とは少しばかり違っていました。これもきっと6年生以上のコースだからこそ見られる姿なのでしょう。新鮮に感じました。
この修学旅行のコースでは、1日の活動が終わると人生を語らう時間があります。これは小グループに分かれてその日のテーマに沿って自分の考えや仲間の考えを意見交換する場です。1日目のテーマは「なぜ戦争は起きてしまうのか、どうすれば戦争は無くなるのか」でした。このテーマを聞いたときに、子どもたちの反応を見てみると、最初は少し戸惑っていた様子でしたが、やがて真剣な表情へと切り替わっていきました。まずは自分で考えを深めた後に、意見交換の時間です。一人の男の子は、
「資源をみんなに平等に分け与えれば戦争は起きないと思います。」
と発表したり、またある女の子は、
「銃など全ての武器をこの世からなくしたほうが良い。」
と意見したりなど、子どもによって様々な考えが飛び交いました。お昼の無邪気に遊んでいた姿はそこにはありません。与えられたテーマがどんなものだとしても真剣に考え、自分の考えを発表するだけでなく他の仲間の意見にもしっかりと耳を傾ける姿を見て、流石6年生だなと感じました。
2日目のテーマは「人生において一番自分の好きなもの」でした。また小グループに分かれて一人ずつ何が好きなのかとその理由について発表していきます。すると、少し大人しめな性格のYちゃんに順番が回ってきた時、Yちゃんが固まってしまいました。私が、
「どうしたの?」
と聞くと彼女は首を振って意を決した顔で、
「私は、漫画を描くのが好き!描くのが楽しいから!」
と発表していました。後々Yちゃんに話を聞いてみると、今まで漫画を描いていることが恥ずかしいこと、からかわれるかもと思い好きな気持ちを表に出してこなかったそうです。ただ、あそこで自分に噓をつきたくなくて勇気を出して初めて親以外に伝えられたとスッキリした顔で教えてくれました。
野外では思いっきり遊び、夜には本気で仲間たちと語る。6年生以上のコースだからこそできる内容です。たったの3泊4日間ですが、その中には仲間たちとの濃密な思い出が詰まっています。
大人になるまでの間に、同学年の子たちと生活を共にする機会もそう多くないと思います。自分とは違う考えを持った同世代の子たちと話した経験は、彼ら彼女らがもし壁にぶつかってしまったときの背中を押してくれる思い出の一つとなると私は思います。漫画家になりたいと言っていたYちゃん。Googleに入社したいと言っていたRくん。全ての子が今後、それぞれの歩む道を切り拓いていく姿が楽しみです。