「先生に、『お母さん最近お忙しいですか?』と聞かれた後、思いをぐるぐるめぐらせてみましたが、ここ最近怒りのボルテージも通常範囲内で珍しく思い当たる節がなく(笑)、むしろ今朝は朝からいい感じにベタベタしていたので、何だろう?お友達にバイバイして戻ってきて一言、『ねえ〜っ、スイミングもお母さんと行きたいー』あぁ〜なるほど。夕方、コンサートに私一人行く予定なので、どうやらそれが気に入らないようです。夫に15時までに帰宅するようお願いしてあって、『今日はお父さんにスイミング見てもらえるよ』とスペシャル感を演出してみましたが、『別にみてもらわなくていいっ』と一蹴。帰り道、いじけて坂道で駆け抜けようとしたら、見事に滑って尻餅をついて、大泣き。が、これが功を奏したようで?思いっきり泣いたらスッキリしたみたいです(笑)。いまはニコニコ宿題をやっています。私が夜出るときは、祖父母宅でやりたい放題、か、お父さんと外食、と、彼女にとっても楽しみがある日は快く送り出してくれるのですが、あの日は朝から私が夕食の準備をしていたのを見ていたので『お楽しみなし』に気づいていたようで(笑)。あぁ、ザワザワした気持ちを表せて(滲み出て、笑)それを感じ取って親の私に伝えてくださる方がいて、親子ともに恵まれてるね、そして、(転んでだけど)大泣きして思いを消化できてよかったね、と思いました。」
いまはもう中学2年生になった教え子が、年長さんだった時代の、お母さんとのやりとり。お姉ちゃんと違い甘えん坊で、感情の起伏がわかりやすく行動に表れるタイプの彼女の言動に、授業中違和感を覚えて、お迎えのお母さんにチラッと伺ってみたけれど、「はて?」という感じのお母さん。それから数時間後に送られてきたメールは、お母さんの、「はて?→これか!」につながったという報告エピソードでした。
「あれ、今日はどうしたのかな?」「何かが違う」その’感じ’を、そのままにしないで考えてみる。花まるではそれを「思いを馳せる」「感じて、考える」と言ったりします。
目の前にいる子どもたちが「なぜそうした」のかについて、「だめ」「やめなさい」と一方的に言うのではなく「なぜだろう」を必ず通してみる。そうすると表面的な行動だけでなく、目には見えないその裏にあるものが見えてくるからです。
「なぜおかしいと思ったのか」「何に憤りを覚えるのか」「私は、ではどうしたいのか」…それらを言葉にして人は思考を深め、自分自身を知り、相手を理解しようとします。子育て世代の保護者の方にとっては、わが子を通して、自分と向き合わざるを得ない時代とも言えるでしょう。
冒頭のお母さんは、まさに「考える」の部分をなおざりにせずに意識してくださったことで、彼女の心のザワザワ「なぜそうなったの?」の部分を突き止めることができました。私が授業の中で「いつもと違う彼女の’感じ’に思いを馳せようとしたように、お母さんも、彼女の心の声に、耳を澄まそうとしてくださったのだなと思うのです。
子どもたちの遠い未来を見すえて思いを馳せ、今年度も保護者の方とともに、感じて、考えて、言葉にしていきます。どうぞよろしくお願いします。
井岡 由実(Rin)
🌸著者|井岡由実(RIN)
国内外での創作・音楽活動や展示を続けながら、 「芸術を通した感性の育成」をテーマに「ARTのとびら」を主宰。教育×ARTの交わるところを世の中に発信し続けている。著書に『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』 (実務教育出版)ほか。
「Atelier for KIDs」は、 小さなアーティストたちのための創作ワークショップです。
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