【Rinコラム】 『じぶんが何かをしたい、という 湧き上がる気持ち』2019年9月

【Rinコラム】 『じぶんが何かをしたい、という 湧き上がる気持ち』2019年9月

こころと頭を同時に伸ばす 幼児期の子育て5

子どもあるある。
子どもには、周囲のたくさんのモノの中から、自分にとって意味のあるモノを見つけ、ため込む習性があります。
大人にとってはガラクタのように見えても、子どもにとってはどれも大切な宝物。
それがどんな意味を子どもにもたらすかはわからないし、たぶんもたらさない。
ただこのことは、取り巻く多くのモノの中からかけがえのないモノを「自分で」選ぶ基準を子どもの中に作るのでしょう。
そしてそれを大切にすることと、決別する経験も。

小さな日常の中に、ふと心が動く出来事が、誰にでもきっとあるはずです。
「自分が何かをしたい」という興味関心、内側から湧き上がるもの。
「やろう」でも「やらなければ」でもない、「やりたい」という気持ち。
「誰かにほめられるから」ではなく「何かを得られるから」でもない、なぜかわくわくする感情を、子どものこころに生み出せるかどうか。

大人のこころが動くことに、子どもたちは敏感です。
内的な人間の成長としての「興味、関心」、内側からの気持ちのことです。
大人が集中して何かに取り組んでいる様子に、子どもは繊細に反応します。
彼らは無意識に、そのような大人を望んでいる生きものなのです。

家の外ではほとんどしゃべらず、他の子どもたちと関わらず、ひとりでただ黙々と創作し続けていた幼児期、私の母は部屋の一角にビニールシートを敷いてくれていました。
いつでも絵の具を出して汚してもいいように。
どの家にもそういう場所があるものだと思って大人になり、そのことが当たり前ではなかったと気づいたのは、幼児を教える側になってからでした。
母は、私が好きで夢中になっていることを守ろうとしてくれていた。
そのことに思い至ったとき、母の愛を感じました。

好きなことをたっぷりやれる子は変身します。
知能の発達とは、素朴な疑問や、驚き、そして納得といった、いくつもの没頭経験の連続の果てに成り立つからです。
彼らは「やりきった」後、外の世界へと挑戦する力を発揮していく。

子どもたちが自分だけで没頭できる濃密体験を持てているか、ぜひとも気にしてあげてください。
そして、大人であるあなた自身のこころが動くことについて、いま一度自分の胸に語りかけてみてください。
遠回りのようでいて、そのことは子どもたちのこころと頭を育てることにつながります。
人間とは、生きている間中ずっと、自分で自分を育てていくものだからです。
みなさんのこころが躍動することは何ですか?

どの子も、自分が本当にやりたいことを知っている子になれるように。
本当の「関心」とは、人から与えられないものなのですから。
 
井岡 由実(Rin)


著者|井岡由実(RIN)

井岡由実 国内外での創作・音楽活動や展示を続けながら、 「芸術を通した感性の育成」をテーマに「ARTのとびら」を主宰。教育×ARTの交わるところを世の中に発信し続けている。著書に『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』 (実務教育出版)ほか。

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