あなたにはふたりの子どもがいるとします。あなたの帰宅を待っていた子どもたちが、玄関に出迎えます。あなたの手にはふたりへのお土産があります。「ただいま」と言ってから、あなたはそのお土産を手渡します。
さて、どちらの子から先に声をかけ、まずどの子にお土産を渡しますか?実は、きょうだいには、一生変えることのできない優先順位がはじめから決められています。それは、先に生まれた子、つまり上の子がいつでも一番です。保護者が子どもたちに接するときには、この優先順位を守ることが、実はとても大切です。下の子が生まれてから上の子がひねくれたり、赤ちゃん返りをしたりして困っている、という相談はよく聞きますが、そんなときにも、優先順位を今一度確認してみるだけで、問題は解決したりするものです。
ふたりの子どもたちが玄関にお迎えに来たら、まず上の子の頭をなでてあげる。それから下の子の頭をなでてあげる。お土産は「ハイ、まずはお兄ちゃん」。ひとつしかないものならば、必ず上の子に。そうすれば、お兄ちゃんは弟を大事にし、弟は兄を尊敬するようになります。
花まる学習会では、「メシ一番法」ということばで伝えています。家族が一緒に食事をするときには、最初に「お父さん」からごはんをよそう。食事のときは、ついつい一番手のかかる年下の子を構ってしまうものですが、とにもかくにもごはんをよそうときだけは「ハイちょっと待って。まずはお父さん…次にお姉ちゃんから…」ともったいぶってやってみせてあげてください。子どもたちにとっても「大好きなお母さんが尊敬するお父さん」と、父の威厳が保たれるわけです。
このことを考えるとき必ず思い出すのは、ジブリ映画「となりのトトロ」に登場するサツキとメイのきょうだいが、お母さんのお見舞いをする場面です。お母さんは、最初は真っ先に駆け込んできたメイちゃんに応対するのですが、そのあとは徹底して上の子を優先するのです。メイの髪型を、メイに「かわいいね」というのではなく、結んであげているサツキを褒めます。そしてサツキの髪を気にして、「あなたは母さん似だから」と、サツキが一番嬉しい言葉をかけます。
「メイもメイも!」と下の子が割り込もうとしますが、それには取り合いません。サツキがちょっときつめに「順番!」と注意するのですが、それに対しても「あなたはお姉ちゃんだから我慢しなさい」とは言わないのです。この場面、何回見ても、ハッとします。うまいなあ、花まるの先生なのかなあ、と。
このことは、ご自身が長女/長男だった保護者の方々には、特に共感いただけるかもしれません。「こんなふうに言ってもらえたら、こっそり鼻の穴を膨らまして喜んでいただろうなぁ」と。そうなのです。いつだって家族のために、下の子のために我慢してあげなきゃ、と考えるところがあるのが長子という生き物。そんなに優しいのに、なぜか自分の気持ちはうまく言えず不器用だったり、そんな兄姉のことを見て育っている下の子の上手な立ち回りに、怒られ役になってしまっていたりして。
どんなときでも、「年上が先」という順序を守ってみる。意識して生活してみてくださいね。
井岡 由実(Rin)
国内外での創作・音楽活動や展示を続けながら、 「芸術を通した感性の育成」をテーマに「ARTのとびら」を主宰。教育×ARTの交わるところを世の中に発信し続けている。著書に『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』 (実務教育出版)ほか。
「Atelier for KIDs」は、 小さなアーティストたちのための創作ワークショップです。
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