【高濱コラム】 『家族の夏のために』2020年6月

【高濱コラム】 『家族の夏のために』2020年6月

「今年の父の日は、夏至と重なっていてしかも日食まであるんです。次にそれが起こるのは 700 年後。オンラインで世界をつないで父の日イベントをやりましょう!」
少年のような表情で提案してきたのは、処女作の 「ツッコミ理科」 がベストセラーになったスクール F C の江上修です。
ツッコミ理科のアイデアを聞いてくれというので、 会って数枚のページ案を見た瞬間、絶対に行けると感じたことをよく覚えていますが、今回も「おもしろい!」と感じました。
何より良いのが、彼の心がワクワクと胸高鳴っていることを実感できたことです。
大人自身がおもしろがっていない知識を「ためになるから」と押し付けられても子どもの頭脳に定着はしにくいのですが、小 6 の男児が「あのね、すごくおもしろいことあったんだよ」と友だちに報告するときのようなキラキラした目で語る江上を見て、こういう社員とチームを組めていることの幸せを感じました。

皆それぞれに多くのタスクを抱えているのもものともせず、どんどん社員仲間を巻き込み、当日はとうとう全国各地はおろか世界10か国以上のリポーターともつないで、地球規模のイベントであることを、重みある手ごたえとして伝えてくれました。
私は東京御茶ノ水担当だったのですが、残念ながら厚い雲に遮られて、その時間の太陽を見ることはできませんでした。
しかし、オンラインの良いところは、例えば同じ時刻に佐賀県武雄市で確認できたクッキリと素晴らしい日食を見て、まるで自分も経験できた気持ちになれたことです。
太陽以外でも各国の様子(例えばヨーロッパでは、今、夜の11時まで明るいことなど)を感じられたり、「全員が放送局」時代の子どもリポーターたちの活き活きとした様子に感動したり、結婚して青森に転居した社員 (小 1 の頃、幼稚園教室で直接教えた子です) が、陽光を浴びて実に幸せそうな表情で登場した姿に、父のように「良かったなあ」という気持ちになったり、いろいろな意味で心豊かな時間となりました。

コロナの渦中でみんながZOOMに慣れていたおかげで、このような新しいイベントが成立し喜びをもたらしてくれたわけで、塞翁が馬そのものの事例だなと感じました。
これを経験した今後は、またどんどんオンラインだからこそできるイベントが増えていくのでしょう。世界は狭くなりました。

さて、 夏です。
すでに報告した通り、花まるの歴史上で初めてサマースクールが中止に追い込まれました。
最後の最後まで熱い議論を交わして、規模を縮小するなり工夫をこらすなりしての開催を模索したのですが、結局交通手段と就寝する宿での密が完全に回避できない(寝たらゴロゴロ移動してしまい重なり合ってしまうのが子どもなので)ことと、複数の現地の空気が「都会の人たちが大勢来ることは避けてほしい」というものだったことが、決定打となりました。

すでにお伝えしましたが、中止を決断した夜、落胆のあまり免疫力が落ちたのでしょう、私は熱発してしまいました。
また、サマーの中心であるファイアーこと箕浦も気落ちしてしまい、思春期の娘に「パパ元気無いね」と言われるほどだったそうです。

ですが、すぐに切り替えました。
仮に個人として、病気でいっときやりたい活動がやれなかったとしたら、本をたくさん読んだり観たかった映画を観たり、 「その状況だからこそできる意義あること」で自分を高めればよい。
会社としても同じ。一度きりの今年の夏を、未来につながる最高に意味あるものにしよう、と。

すでに野外の安全管理では公の機関に相談されるくらいの信頼を積み上げてきた花まるですが、具体的な一つ目は、もっと徹底的に安全を極める学びの時間にしようということです。
食・動物・虫・植物・天候・岩場や急流などのロケーション・子ども同士で起こる関係性の中での問題などなど、勉強会をゼミ形式で開催し、考え得る危険を再チェックし、組織としての安全への知識をレベルアップします。

また、タカハマチャンネルの枠組みを活かし、各現場に行って、川遊びの基本、魚つかみの仕方、釣りのコツ、 テントの張り方、 火の起こし方、キャンプファイアの薪の組み方、野外調理、秘密基地の作り方、野原での遊び方などなど、映像でお伝えしたいと思っています。
それは、家族で行ってほしいと願うからです。
不特定多数が集まることには、当面大きな制限がかかりますが、家族というユニットで野外活動をすることは、大いに認められる空気が醸成されていると思います。
その動画を見ながら、ぜひご家族で楽しんでほしいと思います。
また、動画に残しておくことは、例えば来年以降、コース選びをしていただくときに、 「ああ、こんな山、こんな川なんだな」 「なるほどこういう森の中に基地をつくるんだな」と理解してもらえるとも考えました。

一言付け加えると、ここでこそお父さんに活躍してほしいなと思います。
今回の日食イベントでも、お父さんがいろいろ頑張られたんだなと感じるご家族もたくさん見ましたし、その家庭ではお母さんも子どもも笑顔が花開いていました。
川や森や海で、少々危ないことが大好きで虫や魚釣りが好きな男子魂を発揮して、誰よりも楽しんでみせてほしいと思います。
子どもたちは楽しそうなお父さんが大好きだし、自分もああいう大人になりたいと願います。

もちろん、このような活動だけではなく、たくさん本を読んで感想を言い合うとか、映画を一緒に観て思いを語り合うとか、算数やパズルを一緒に解くとか、囲碁やアルゴをやるとか、趣味嗜好に応じてできることは無尽蔵に考えられますが、いずれにせよ、今年の夏ほど、家族だからこそできることの重みがある夏はないでしょう。
3 年生ならば、3 年生の夏は一度きりです。
子どもたちにとって心躍動し目を見開く経験に溢れた夏となりますように。

私たちも精一杯の応援をいたします。

 
花まる学習会代表 高濱 正伸

※「無人島開拓団」について、かなりの数の問い合わせをいただいております。お父さんだけでなくお母さんでも手伝いたいと言ってくださる方までいました。期待の大きさを感じました。ありがとうございます。目下着々と準備中ですので、 もう少々お待ちください。

花まる学習会代表 高濱 正伸


著者|高濱 正伸

高濱 正伸 花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長、算数オリンピック委員会作問委員、日本棋院理事。1959年熊本県生まれ。東京大学卒、同大学院修了。1993年、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「花まる学習会」を設立。「親だからできること」など大好評の講演会は全国で年間約130開催しており、これまでにのべ20万人以上が参加している。『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』『算数脳パズルなぞぺ~』シリーズ、『メシが食える大人になる!よのなかルールブック』など、著書多数。

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