【Rinコラム 】『日常の中で、知力を伸ばす』2019年5月

【Rinコラム 】『日常の中で、知力を伸ばす』2019年5月

こころと頭を同時に伸ばす 幼児期の子育て2

外遊びやお手伝い経験の、豊富な子とそうでない子とで、考える力やひらめきに差が出るのはなぜでしょうか。

たとえば立体の切り口の問題。
断面図がどういう形になるか、わかる子にはなんでもない問題で、感覚としてすぐにできてしまいます。
なぜなら、実際にお手伝いで豆腐や長ネギを切った断面を見たことがあるから。
コマを回転させた図が、どんなふうに変化するか理解できるのは、こま回しをやったことがあれば、ぐるぐる勢いよく回るコマに書いてある柄がどんなふうに変化するのか、既に遊びを通して経験済みだからです。

誰かのために、役割を与えることで責任を持たせて任せるお手伝い。
風呂掃除ひとつとっても、 「この順番でやったほうが早くきれいにできるな」 「ここに道具を置いておくとやりやすい」などと、日々同じ仕事を継続することで伸びる集中力、よりよくやろうと試行錯誤する中で培われる工夫する力、やりぬこうとする意志力が培われていきます。

花まるの年中・年長コースの思考実験では、ものそのものに触れて実体験を積み重ねることが大きな目的です。
この時期に一番必要なのはペーパー上での練習ではなく、 「楽しい!」 「おもしろい!」 「不思議!」という生きた感情の中で、遊びを通して体験を積むこと。
それこそが将来の思考力の礎を作り、主体的な学びへの第一歩となるからです。

おうちの人ができることは、感動や発見を「よかったねえ」 「すごいねえ」と一緒に共感してあげること。

アナログな、五感を使い切った遊びを十分にさせてあげてください。
そして、ぜひ簡単なお手伝いからスタートして、それを日々継続させてあげてください。
「手伝ってくれて嬉しい、 助かった、ありがとう」という言葉は、子どもたちに「自分が関わったことで誰かに感謝された」という喜びを与えます。
「自分は役に立つことができる」という、他者との関わりから生まれる自尊感情は、レジリエンス(立ち直る力)につながる自己肯定感となって彼らの将来を支えます。
日常の中で自己肯定感を育むことこそが、子どもたちの考える力、知力を伸ばすのです。

井岡由実(Rin)


著者|井岡由実(RIN)

井岡由実 国内外での創作・音楽活動や展示を続けながら、 「芸術を通した感性の育成」をテーマに「ARTのとびら」を主宰。教育×ARTの交わるところを世の中に発信し続けている。著書に『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』 (実務教育出版)ほか。

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