2023年度の3月に開催した「 6年生限定・春の無人島野外体験」、現場からのレポートをお届けします!
無人島に子どもたちを引率した 「カトパン」のレポートです。
この2泊3日には、子どもたちの挑戦がたくさん詰まっていました。ここでは、そんな子どもたちの挑戦を振り返ります。
【1日目】
福山駅への現地集合。新幹線のドアが開くと、先頭の子が「カトパーン!」と言いながら降り、それに続いて子どもたちがぞろぞろと降りてきました。緊張の糸がほぐれ、ホッと安堵した子どもたちの表情がそこにはありました。 集合場所に移動し、担当するリーダーと合流。いつもは保護者の方がしてくださっている体調管理についての申し送りも、子ども自身がおこないます。これもひとつの挑戦です。
各班でハイエースに乗車し、安芸津研修所を目指します。道中では、自己紹介タイムや名前覚えゲーム、リーダークイズ、インタビュータイム(目標発表)などをおこない、まずはお互いのことを「知る」時間を取りました。
この日は強風の予報が出ていて、弊社の出航の安全基準を満たさなかったため、無人島に向かうことは断念し、研修所の駐車場にてテント立てや火おこし、飯盒炊爨をおこないました。心のなかでは島に行けないことにモヤモヤを感じていた子もいたと思いますが、誰一人としてそれを口にすることはなく、いま目の前に「ある」ものに着目し、その場を楽しみ尽くしていました。
テント立てでは、レクチャーを受けてから班ごとにテント立てのタイムアタックに挑戦! 1班は12分、2班は14分とどちらも好タイムを叩き出しました! 協同作業のなかで子どもたちの団結力が一段と増していく瞬間でした。
テントを立て、寝床を確保できたところで次は火おこしレクチャーです。無人島で生き抜くために「火」をおこすことは大事なスキルのひとつです。物が燃えるために必要な、可燃物・酸素・熱の「燃焼の三要素」について学び、まずはマッチの扱い方をマスターするため一人ひと箱マッチを使って何度も練習をしました。そして、研修所近くの森を散策して自然の燃料を集め、それらの材料を使って火をおこし、火を育てる練習もしました。最初はなかなかうまくいかない様子でしたが、失敗からたくさんのことを学びます。そこには、「枝を詰めすぎて空気が入らなくなってしまったのかもしれない」「最初から太い枝を入れすぎたかな? もっと鉛筆サイズの細い枝を集めてこようよ」と試行錯誤し続ける子どもたちの姿がありました。この試行錯誤こそが、生きた知識に変わっていきます。
火おこしのスキルを身につけたところで、飯盒でお米を炊き、カレーを食べました。夕食のあとは、焚き火を囲んでの語り合い。今回のコースのメインイベントは、10年後に掘り起こすタイムカプセル埋めることです。それに向けて「タイムカプセルに入れるものの紹介」と「10年後にどんな人生を送っていたいか」をテーマに語り合いました。ここで子どもたちの発表を少しご紹介します。
「僕は、花まる鉛筆と習字で書いた作品を入れます。花まるの鉛筆は、7年間お世話になった思い出として持ってきました。習字で書いた『挑』という字は、大人になってもたくさんのことに挑み続けられるようにという想いを込めました」
「10年後の自分への手紙を持ってきました。理由は、10年後の自分が勇気をもらえるのは手紙だと思ったからです。10年後は、ほかの人や子どもなどに夢や勇気を与えられる人になりたいです」
「入れるものは、手紙とルービックキューブと折り紙と手編みの作品です。どうしてこれを入れるかというと、全部6年生のときにマイブームになったもので、10年後に掘り起こしたときに6年生のときに何をやっていたのかを思い出したかったからです」
「僕が入れるのは、4月から通う学校のパンフレットです。中学受験では第一志望に合格できなかったけれど、これからこの学校に通って過ごしてどうなっているのかっていうのが気になったからです。あと、このパンフレットのなかに塾で一緒に授業を受けた人も何人かいるので、その人たちとの思い出も一緒に入れたいと思ったからです」
「私は手紙と小学校のクラス全員が映っている写真を入れます。手紙には、いまの自分のことと、将来自分がどうなりたいかを書きました。自分のことを書いたのは、懐かしいなあ、と自分が小学生のときのことを振り返れると思ったからです。自分はこれから大人になるにつれて、言葉だけでなく行動できる人になりたいです」
「私は10年後の自分への手紙と、手作りの作品を持ってきました。なぜこれを持ってきたかというと、最近になって、自分でこういう作品を作れるようになったので、その思い出として残しておきたいなというのと、その作品のなかには空気が入っているんですが、最近私のパパが亡くなって、そのいたときの空気が入っている気がするから、これを持ってきました。10年後の自分は…やりたいことは10年後の自分が決めると思うので、未来に託したいと思います」
「私は、手紙と足形と手形を持ってきました。手紙を持ってきた理由は、中学受験をしたいまの自分の気持ちを書いて、それを10年後に読みたいなと思ったからです。足形と手形を持ってきたのは、10年後に自分がどれくらい成長したのかを見たいと思ったからです。10年後は中学受験の反省や学んだことを活かした自分になっていたいです」
「私は手紙と本を持ってきました。『君たちはどう生きるか』という本を持ってきたのですが、ちょっと難しかったので、10年後に読んだら印象が変わるかなと思って持ってきました」
「僕が持ってきたのは、自分への手紙とちょっと価値のあるポケモンカードです。10年後、もしが僕が困っていたらそれを売ってお金にしたいと思ったからです。でもそのときに困っていなかったら、お母さんに感謝の気持ちを込めてそのお金を渡したいなと思います」
一人ひとりが「いま」の正直な気持ちを語ってくれました。
【2日目】
2日目も強風の予報だったのですが、子どもたちの想いが届いて朝から風は穏やかに。この日は日の出前の5時半に起床し、日の出とともに出航して朝日を浴びながら無人島を目指しました。船は、花まる学習会が所有している「花まる丸」と「夢来丸(ゆめきまる)」の2艇です。「夢来丸」には、子どもたちの夢をのせて来島を目指し、無人島で子どもたちの夢を叶える、という想いが込められています。島に到着して最初のミッションは、荷物おろし。船をつけた浜から活動拠点まで一列に並んで、バケツリレー方式で荷物を運び入れます。声をかけ合いながら、力を合わせて一つのことを成し遂げ、みんなで達成感を味わいました。
いよいよ、無人島生活がスタート! まずは、島での過ごし方レクチャーです。トイレは、災害時などにも利用できる簡易トイレを設置しています。普段の生活では流せば終わるかもしれませんが、この簡易トイレはそう簡単にいきません。黒ポリ袋を便座にかけ、凝固剤を入れてそこに用を足し、袋をしばってゴミ袋に入れる。そして最後はみんなで持ち帰る。不便な経験をすることや、排泄について考える機会になればと思い、この方法をとっています。島で使用している災害用のトイレは、水が止まり、排水管が壊れてしまったときにご家庭でも使えるものです。黒ポリ袋と尿を固める凝固剤に加え、消臭効果のあるごみ袋もセットになっています。ご家庭でも防災用として備蓄することをおすすめします。
朝食は、手作りのカートンドックです。食パンにチーズとハム、コーンをのせて、アルミホイルで巻いて持参した牛乳パックに入れる。そして、マッチで牛乳パックに火をつければ、トースター代わりになります。頭を使って知恵を絞れば、生活は豊かになる。そんなことを感じる朝となりました。
午前の活動は、釣りレクチャーです。一人一本自分の竿を組み立て、釣りに挑戦! 約2時間取り組んで、釣果はゼロ! このままでは昼食が醤油メシだけになるところでしたが、そんなときこそ、「ない」ではなく「ある」をみるべし! 仲間の植物博士が、ハコベやスイバを見つけてきました。「魚が釣れなくて絶望していたのに、こんなごはんが食べられるなんて、もつべきものは仲間だね」と感動の声が。「ない」からこそ、そこに「ある」かけがえのないものに気づくことができたのかもしれません。
昼食後は、いよいよタイムカプセルを埋める作業です。班ごとに分かれて、自由に島内を探索し、埋めたい場所を探しました。私は1班に同行したのですが、彼らは急斜面を登っていくことを決断し、水が流れ落ちる谷間を勢いよく登っていきました。そして、やっとの思いで登りきると、そこは尾根になっていて、瀬戸内海が一望できる絶景が拡がっていたのです! 苦労して登ったぶん、その感動はひとしおでした。そして、その尾根の平らなところに穴を掘り、1班のタイムカプセルを埋めました。2班はというと、1班とは逆方向に進み、斜面を登り、生い茂るツタをかき分けてやっとの思いでたどりついたところにタイムカプセルを埋めたそうです。
10年後、果たして子どもたちはこの埋めた場所を覚えているのか? それも含めて、いまからワクワクしています!
ちなみに、スタッフの「職人」がタイムカプセルに入れたのは、子どもたちは入れることができないウイスキーでした。10年後、子どもたちは20歳を過ぎお酒を飲むことができる年齢です。そのときに、再会してそのお酒で乾杯しよう、とみんなで約束しました。
タイムカプセルを埋めに行く道中で、野蒜やイタドリ、蕨などの山菜を発見! さらに浜辺でアカモクを採ることができ、貴重な夕飯の食材を手に入れることができました。そして、活動拠点の片付けをして無人島を後にしました。
研修所に戻ると、無人島生活の続きがスタートします。夕食は「釣れなかったら醤油メシサバイバル」の延長戦! 魚は釣れなかったものの海藻や山菜がたくさん採れたので、植物博士のアドバイスのもと、下ごしらえをしていきます。蕨のアクを取りたいから塩が欲しいと要望があったのですが、なんと調味料の一部を無人島に置いてきてしまいました。そんなときこそ「ない」ではなく、「ある」をみるべし! 塩ではなく、灰でもアクぬきができる! 子どもたちは頭をひねり、知恵を出し合い、食事を完成させました。一人では到底乗り越えることができない課題を前に、一人ひとりが自分の持ち場で輝きました。火の番をする子、火が弱くなってきたら山から材料を集めてくる子、山菜の下ごしらえをする子、時間を見ながら全体に声をかけてくれる子、ユーモアセンスに溢れて笑いを提供してくれる子、まわりの子を気にかけて声をかけに行く子…誰か一人が欠けてもチームは成り立たちません。みんなで支え合って、いまを一生懸命生きました。
【3日目】
最終日の朝食は、非常食を食べました。災害の多い昨今、いつ自分が経験することになってもおかしくない時代です。子どもたちに非常食を食べたことがあるか尋ねると「学校で非常食を食べてみようという授業があった」「家で1年に一回は賞味期限が切れそうなものを食べているよ」などの声があがりました。ローリングストックという備蓄方法にも触れてから、みんなで非常食を食べました。
今回のコースで学んだスキルは、災害時にも役立ちます。災害用トイレの使い方や非常食に加え、食器はビニール袋をかぶせて洗い物を減らすなど、水の節水についても考えました。災害が起きないことが一番ですが、もしものときを想定して、「ない」ではなく「ある」に目を向ける。雨ならば雨を楽しむ。子どもたちは、どんなことがあっても生き抜くサバイバルスキルを身につけていきました。
朝食後は、お世話になった研修所を感謝の気持ちを込めて掃除し、3日間の思い出を作文にまとめました。そして最後のイベント、語り合いをおこないました。テーマは、「この3日間を振り返ってあなたが感じたことは?」「あなたにとって自由とは?」「ここまでお世話になった家族へ」の3つ。ご家族にあてたメッセージは動画におさめましたので、後日、保護者のみなさまへお送りします。
今回のコースでは、リーダーから子どもたちにメッセージカードをお渡ししました。名札に一緒に入れて持ち帰っていますので、ご確認いただけますと幸いです。さらに、高濱先生からのプレゼントとして、無人島オリジナルマグカップとシールをお渡ししました。ぜひご家庭でお使いいただき、無人島を思い出していただけたらと思います。そして10年後、このマグカップを持って無人島に集合し、みんなで乾杯しましょう!
3日間を通して印象に残ったことは、子どもたちの発する言葉がいつも感謝で溢れていたことです。「持ってきてくれてありがとう」「さっきは〇〇してくれてありがとう」など、相手を思いやるあたたかな言葉が飛び交っていました。その言葉を近くで聞いている私の心が温かくなり、ついホロっと涙が出てしまうほどでした。
「ないではなく、あるをみるべし」
いまここにあるもの、それを改めて見つめると、かけがえのないいまあるものに気がつく。 情報やモノにあふれている世の中だからこそ、目先の欲を満たすことはいくらでもできます。でも、もっとシンプルなところに、心がポッっとあたたまる源泉があるのではないか、と子どもたちと接しながらしんみりと感じていました。
子どもたちが10年後どんな人生を歩んでいるのか、私も子どもたちに負けないよう、人生にワクワクし続けたいと思います!
2024年 春
花まる学習会 カトパン/加藤崇彰
🌳花まる野外体験公式サイト
https://hanamaruyagai.jp/
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https://www.instagram.com/hanamaru_mujinto/?hl=ja
加藤崇彰(かとうたかあき)/カトパン
花まる学習会(関西ブロック)
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<春の無人島野外体験>