【Question】
子どもがやったことや、学校でいただいた注意・指摘などを、ネガティブに受け止めてしまったとき、マイナス思考になって子どものできていないことばかりに目がいき、あれもダメこれもダメと、いい子像に矯正しようとしてしまい、ありのまま、そのままで素晴らしいと思えなくなっていました。ネガティブなとらえ方、マイナス思考に陥ったときに、プラスに転換するような秘訣がもしあればお聞きしたいです。
(3年生男の子のお母さまより)
【Answer】
まず初めにお伝えしたいことは、プラスに転換しなければ、と思う必要はない、ということです。
「自分はそんなふうに感じたんだな」「人から言われたことで、余裕がなくなっているな」「そのままで素晴らしいと思えなくなっているな」という状態像/事実のみをまずそのまま受け止めます。この方の場合は、そんな自分をメタ認知して、こうやって言葉にされています。そして、本当の彼の良さをちゃんと知っておられるのだなとわかります。
さてそのうえで、考え方の視点を変えたいというときにできることを考えてみましょう。物事の見え方をこれまでと異なるものに変えてみることを、心理学では「リフレーミング」と言いますが、多角的に物事を見るクセ、というのは実は訓練でもつけられます。
たとえば「あと5分しかないね」と「まだ5分もあるね」は、事実は同じですが、とらえ方が違います。
「〜しかない」と思う人は、心配性でマイナスの要素を想定しやすく、慎重で、物事を計画的に考えることができる、危機管理力に長けている人ともいえるでしょう。
「〜も」ととらえる人は、足りない部分を想定しておかないといけないのに、大丈夫と思ってしまい、詰めが甘い人かもしれません。
どちらの性質がいいか悪いか、ということではなく、自分がどんなクセを持っているのかを知ることが大切です。
「失敗した」は「挑戦した」に、「うまくいかなかった」は「うまくいかない方法を見つけた」に、見方を変えると使う言葉が違ってきます。“発想の転換”(新しい見方に変えていく)と似ていますね。
アート制作では、自分の思い通りにいかない葛藤体験、試行錯誤と子どもたちが向き合う場面が訪れます。
そんなときに「ああもうだめだ。先生これは失敗です」と諦めるのか、「もしかしたら違う何かが生まれる瞬間かもしれない」と考えてみるのかでは、その後の選択肢が違ってきます。
いままでとは異なる別の見え方、考え方に変える、ということは、保育士さんにもよくやってもらいます。
集中力があるからこそ、もうおしまいですよ、の言葉が耳に入らないかもしれない。おとなしい、は穏やか。すぐ怒るね、は感受性豊かなんだね。我が強い、は自分の意見を持っている。不器用、は真面目さや誠実さの裏返し。こう考えていくと「マイナス思考」をいけないことととらえる必要もない気がしてきます。
「こうあってほしい」「こうあらねばならない」というような、「ほかの人はどう思うだろうか?」ということを判断基準にしていると、他人の価値観に振り回されやすくなります。
「何が正しいか」「何が優れているか」と考えることは、いつまでも他人の目線や評価を気にし続けることになります。大切なのは自分が自分の軸(感性)で決められると知っていること。
子どもは、きっかけさえ与えれば「ああでもある、こうでもある」と考える視点を自然と持つことができます。私はその特性にいつも驚かされます。
「こうでなければ」と一つだけの正解を求めがちな大人と違い、必ずしも答えは一つでなくてもいい、という視点は(本来誰にとっても大切ですが)人の気づかないところを掘り下げるものづくりにおいては必須の条件ともいえるのです。
わが子の性質を別の見方で表現してもらいたい、そんなときはぜひ教室長にも頼ってくださいね。
井岡 由実(Rin)
🌸著者|井岡由実(RIN)
国内外での創作・音楽活動や展示を続けながら、 「芸術を通した感性の育成」をテーマに「ARTのとびら」を主宰。教育×ARTの交わるところを世の中に発信し続けている。著書に『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』 (実務教育出版)ほか。
「Atelier for KIDs」は、 小さなアーティストたちのための創作ワークショップです。
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