【西郡コラム】『授業開始時の話』 2023年12月

【西郡コラム】『授業開始時の話』 2023年12月

 4年生の授業は、私の話からはじまる。
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 オンラインでみなさんの学力を伸ばす、とっておきの方法、秘訣は何だと思いますか?
 コロナウイルスが蔓延して、全国の学校が休みになり、人が集まる活動ができなくなったことから道場の学習をオンラインに切り替えました。いまも続けています。この3年間、オンラインでの学習を続けてきて、オンラインのときにはこういうやり方をすればみなさんの学習はよくなる、学力が伸びるという方法がわかってきました。オンライン学習の秘訣です。何だと思いますか?
 それは、みなさんが自分の顔を画面の中央に映すことです。え、なんだ、そんなことでよくなるの、と思うかもしれませんが、実はこれが効果絶大でした。メタモジを使っていますから、みなさんの書き込む様子をリアルに同時進行で見ることができます。私たちもみなさんのメタモジに書き込むことはできます。みなさんの学習の様子を、リアルタイムで確認できるのです。便利な機能ですが、コピーして貼ったり、答えを見たり、便利さに乗じてごまかすこともできます。画面に映らないようにして、授業に関係のない動画を見たり、何か違うことをやったり、やった振りをしたりすることもできます。そんなことをしている人はどこか何かを隠すようにして目線をずらして見えないように映しています。正面に顔を映さないのです。
 知らないこと、わからないこと、できないことを学ぶから、子どもは成長します。知らない、わからない、できないから学習道場で学んでいます。わからない、できないことが学習の最優先の課題なのです。私たちがもっとも知りたいことなのです。みなさんの、いま学んでいること、考えることを見せてください、教えてください。隠さないこと、見せること、さらすことが無駄のない、効果的な学習になります。正面の中央に顔を映すというのは、あるがままのみなさんの学習を正直に見せるということです。正直さがみなさんの学力を伸ばします。オンライン学習の秘訣です。
 みなさんは、これから中学、高校、大学と進学します。社会に出ていきます。オンラインで、日本中、世界中の人たちとつながる活動はますます増えます。オンラインで画面の中央にしっかり映ること、これが最低限のマナーになります。正しいことは、いまからはじめましょう。
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 漢字テスト、どうすれば満点を取れるでしょうか? 目の前に、課題になっている漢字があります。それらの漢字の意味を調べます。部首、画数を調べます。調べることはその漢字の物語を知ることです。見て、書いて、そして音読して五感を使って覚えます。何回書くかは、あなたが決めます。一週間後の今日、練習して覚えてきた漢字を正しく書くことができるかどうかを試すテストをします。
 みなさんに考えてほしいことは、どうすれば、どのような学習をすれば漢字テストで満点を取れるかということです。
 漢字テストで満点を取る方法を自分で考え、あれこれ工夫して試してみて、自分のやり方を編み出します。人それぞれ能力が違います。自分に最もあった学び方は自分でつくります。漢字の学習のやり方がわかれば、英語の単語を覚えましょう。歴史の人物を覚えましょう。こういった課題を覚えるときのやり方がわかることになります。中学、高校と進学して、また、大人になっても学び続けるなかで、大切な学習の仕方の一つを手に入れたことになります。
 漢字テストを受けてみた結果、自分では練習をしてきたつもりでも思い出せなかった、間違えた、書けなかったなど、思うようにならないのは当たり前です。それは仕方がない。何ごともすぐに上手くはいきません。なぜ間違えたのか、忘れたのか、思い出せなかったのか、書けなかったのかを、まず思い知ることです。そこからどうするか、どうすればよかったのかを考えて、やり方をよりよく工夫します。毎週、毎週、試してください。この一連の学習を自分で考えて、練り直します。
 自分の学習の仕方をつくるというのは、あきらめないこと、続けること、よりよくすることです。学習に対する心構えもつくることになります。漢字の学習は世の中を切り開いていく生き方の一つになります。
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 学習を自分事とすること、生涯にわたって学ぶための学び方、学習観、心構えを身につけることが学習道場の指導理念であり、一つひとつの授業でこの指導理念を具体的に展開していきます。一期一会、子どもたちに今日、この日、この授業に集中して取り組んでほしいという思いで、毎回、授業開始時に私が話をしています。

西郡学習道場代表 西郡文啓


🌸著者|西郡文啓

西郡文啓 1958年生まれ。県立熊本高校卒業。高濱代表とは高校の同級生、以来、小説、絵画、映画、演劇、音楽、哲学等、あらゆるジャンルの芸術、学問を語り合ってきた仲。高濱代表が花まる学習会を設立時に参加。スクールFCの立ち上げを経て、花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として西郡学習道場を設立する。2015年度より、「地域おこし協力隊」として、武雄市の小学校に常駐。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。

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