【松島コラム】『コロナと受験』 2023年3月

【松島コラム】『コロナと受験』 2023年3月

 今年も中学入試、高校入試が終わりました。まずは最後までがんばり抜いた受験生のみなさん、それを支え続けたご家族のみなさま、本当にお疲れさまでした。
 今年の受験生は、3年間コロナ禍のなかで学校生活、塾通いを余儀なくされました。マスク着用、手洗い、うがい、検温、大声禁止、黙食、そしてソーシャルディスタンスと、どこに行ってもいろいろな制約があり、子どもらしく自由にのびのびと遊ぶことさえできない日々でした。
 2020年3月の全国一斉休校から一週間ほどで、FCではいち早くオンライン自学室を開室しました。4月には全学年の授業をオンラインに切り替えるという大きな決断をしました。急遽ご家庭にはネット環境やタブレットなどの機材をそろえていただき、オンライン授業の体験会を実施しました。そしてその10日後には、全学年でオンライン授業がスタートしました。私たちも本当にドタバタでした。安心・安全を優先したうえで何とか授業を再開させたいという思いだけで、徹夜続きで準備を行いました。保護者のみなさまもとても協力的に動いてくださり、励ましの声もたくさんいただきました。そして何よりも子どもたち自身が、こうした慣れない環境のなかでも、ほとんど欠席することなく、いつものように元気に授業に参加してくれたことに勇気づけられました。
 その後も対面授業とオンライン授業の切り替えを繰り返しながら、やっと落ち着きを取り戻せたのは受験学年の最後の一年くらいでした。しかしコロナの収束は見えず、制約の多いなかでの生活が続いたことは言うまでもありません。一方では、西郡学習道場やFCオンラインというオンライン授業だけで完結する新しいスタイルのコースを開講できたことは、進学塾としての大きな前進でした。オンライン授業のみで受験した今年の一期生の結果はすばらしいものでしたので、改めてお伝えしたいと思います。
 受験生の保護者のみなさまは、コロナによって学校説明会や文化祭などが中止となり、志望校選びにも相当苦労されたと思います。リアルな学校説明会が実施されるようになると、今度はすぐに満席になってしまい、実際に学校に足を運ぶこともままならない状況が続きました。そうしたなかでここ数年は、学校改革により新しく衣替えする学校が人気になり、噂が噂を呼び、常識では考えられないような倍率になる入試も散見されました。こうした新装校のパターンには、国立大・私大進学コースや帰国生も含む国際系コースを新設するパターンと、大学の付属校または系属校になるパターンがあります。国際系コースは、コロナ禍で海外語学研修や留学が中止になるなかで、学校内で英語を身につけることができる環境が魅力的に感じられたのだと思います。
 一般的に学校名を変える学校は、定員割れが続き経営的にも厳しい学校が多いのですが、そうではない学校でも同じようなコース制の導入や大学との提携を実施するところが増えています。その結果人気となった学校の偏差値は翌年上昇します。逆に言えば、こうした偏差値の上昇は、学校の校風や文化、中身そのものを直接反映したものではないということを改めて実感できるのではないでしょうか。
 まだ何も始まっていない新しい学校への期待と信頼をもってそれを選択することも、学校選びの一つの考え方です。しかし、そうした学校の真価がわかるまでには、少なくとも10年以上はかかると思っています。その点では期待通りの学校に変わっていった学校もあります。ただそうした成功例でも、そこに至るまでには、現場の多くの先生方の努力と、そこに通う生徒・保護者の協力なくしては成り立たなかったのではないかと想像しています。入学したらあとは学校にお任せではなく、特に新しい学校の場合は、保護者も積極的に学校運営に参加し、先生や子どもと一緒につくっていくことが大切ではないかと思うのです。「中学受験ナビ・スクールラジオ」で、ある伝統校の学校長にインタビューしたことがあります。その学校では、保護者の学校行事への積極的な参加が、生徒が安心して学べる環境につながり、そうした校風が人気の一因になっているというのです。まさに学校をつくるのは現場にいる人たちなのです。
 私たちもこの3年間、保護者のみなさまのご支援なくしては、このコロナ禍を乗り越えることはできませんでした。現在コロナは落ち着きを見せていますが、未来を予測することはできません。しかしどんなときも私たちは子どもの学びを守るために力を注いでまいります。引き続きよろしくお願いいたします。

スクールFC代表 松島伸浩


🌸著者|松島 伸浩

松島 伸浩 1963年生まれ、群馬県みどり市出身。現在、スクールFC代表兼花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まる学習会創立時からの旧知であった高濱正伸と再会し、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中である。

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