【80】わからないのその先

 花まるの授業の中で、子どもたちには
「分からなかったら、すぐに聞いてね!」
と伝えています。自分から聞くということは学習に向き合う第一歩。ここで苦戦しているなと気づいてサポートすることもできますが、自分から言えるかどうかで大きく変わります。ですが、「分からない」と子ども自身から伝えることはとても難しく、なかなか勇気が出ない子が多いです。分からないからもうやりたくない、分からないと思われたくない、自分で考え抜きたい等、子どもによって理由は様々です。特に高学年になると、口酸っぱく、「分からないことをそのままにしないでね!できることを増やしていこうね。」と伝えています。そのままにしておくと、ますます分からなくなってしまい、勉強が好きではなくなってしまうからです。伝えてすぐ変化があるわけではありません。長い時間をかけて伝え、見守っていく必要があると考えています。

 Aくんは三年生の頃、分からなかったり、できなかったりすると、突然、泣き出してしまうことがありました。
「俺にはできない!もうやらない!」
間違えることはダメなことという意識も強かったのでしょう。はじめから諦めている訳ではなく果敢に挑戦をするのですが、すぐに気持ちが折れてしまうことが多かったのです。そんなAくんを励まし、認め続けながら、一緒に頑張っていきました。そして、四年生になったAくん。高学年クラスに上がり、学習の難易度も上がります。泣くことは減りましたが、分からない問題の壁は高く、最初の頃は「もうやらない」と投げ出してしまうことがありました。授業が終わるとすぐに帰宅するAくん。分からないことに向き合うのは大人にとっても辛いことです。「よし、頑張ろう」という強い気持ちがないといけません。
間違えた問題があっても
「今日は残って一緒に頑張ろう!」
と何度も念を押して渋々残ってやっていくのでした。
 Aくんに変化があったのは5年生になってから。算数の宿題を見てみると、答えは全て埋めていましたが、丸はほとんどない状態。学校ではまだ習っていない問題で、やり方を忘れてしまったのです。すると、Aくんが
「どこが違うの?分からないから教えて!」
と言ったのです。以前のAくんなら、丸のないノートを見て、「もういい!」と言っていたかもしれません。「教えて」と言えるようになったのは、大きな成長です。そして、どこで間違えていたのかわかった途端、一気にモチベーションが高まり、集中して解き進めることができました。そして、以前は、渋々居残りをしていたにも関わらず、
「今日はここまでやってから帰る!」
と自主的に頑張れるようにもなりました。

 分からないままにしない。これは勉強だけでなく、人生観にも繋がるのではないかと考えています。これから子どもたちにとってたくさんの壁があることでしょう。壁から目を背けず、越えるためにはどうすればいいのかを考えられる人になってほしい。中々、自分から一歩を踏み出せない子もいるかもしれません。だからこそ、寄り添いながら、気軽に頼ることのできる環境作りに努めてまいります。

 

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