【75】任せられる場所を目指して

 思春期や反抗期という言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか?悪いことがかっこいいと思ってしまったり、自立する心が芽生えてくるからこそ親を疎ましく思ったりしてしまう…私にもそんな時期はありました。皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか。私の教室でもこのようなエピソードがありました。

 6年生Sさんの作文。題名は「父親」でした。Sさんのことは2年生のころから知っていて、当時からとても素直に自分のことを書いている子でした。家族をテーマにした作文で「お父さん大好き!」とつづられていたこともあります。

 しかし、6年生になった今の作文では「少し父親のことが嫌い」と書いてありました。理由は「年頃のせいか」とのこと。自分が思春期に入ったことを自覚し始めたのです。
お家でくつろごうとしたタイミングで急に掃除を始められ少しムッとしてしまう場面や台所に行ったついでに「○○とって」と言われて少しイラっとしてしまうことが書かれていました。

 Sさんは心身ともに成長したからこそ、新しい感情に気づいたのです。
その新しい感情は必ずしもいいものではない。自分が思ったように感情表現ができなくて困ってしまうこともあると思います。ふとした発言が誰かを傷つけるつもりはなくても傷つけてしまうことはあるのです。

 Sさんは今、父親を疎ましく感じてしまうのかもしれない。しかしそれは悪いことではありません。思春期の子どもにとって、出会ったことのない様々な感情と向き合うことは相手のことを思いやることができるための成長に必要なことだと思っているからです。そしてきっと、思春期を経て感情の整理がつくことで、きっとまたお父さんのことが大好きなSさんに戻るだろうと感じています。
 私自身も父親を疎ましく感じ、高校生の時には衝突ばかりの日々で、口を聞かない時期がありました。その背景には、やはりSさんと同じように小さなムッとした出来事がたまりにたまり、イライラが限界にきてしまったことがあったからです。思春期を経て、たくさんの感情に出会ったからこそ、気持ちの整理がつき今では父親と良好な関係を築けています。

 思春期の子どもに限らず、我が子にどんな声掛けをするか、どのように接したらいいのか悩むこともあると思います。
 そんなときは、ぜひ我々花まるの先生を頼ってください。親の言うことを素直に受け取れなくなっていく時期だからこそ「外の師匠」が信頼関係を築いていき、叱咤激励しながら子どもたちの学ぶ力、生きていく力を引き出すことができます。

 そのためにも、普段から子どもたちとたくさん会話をして、花まるが子どもたちにとって「本音が言える場所」になることを目指します。毎日顔を合わせる人ではないからこそ、言えることもあるかもしれません。
 そして、保護者の皆様ともたくさん会話をしたいと思っています。「鉛筆の持ち方を直そうと思って私が言っても全然聞かないんです」「宿題のことでいつももめてしまうんです」・・・このようなご家庭での困りごとや悩みもぜひお聞かせください。
 子どもたちにとっても保護者の皆様にとっても「どんなことでも話せる場所」をつくっていきます。これからもどうぞよろしくお願いします。

 

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