【69】「外」だからこそ

 今回は僭越ながら私の個人的な話をさせていただきます。私には子どもが二人います。上の子は3歳の男の子で、下の子は1歳の女の子です。今回は3歳の子の話です。

 彼は今年の5月にある病気を発症してしまいました。即入院し投薬が必要でした。すぐに入院準備をし病院に向かったのですが、そこで衝撃的な事実が判明しました。なんと保護者同伴不可だったのです。同伴どころか面会も一切不可。コロナ対策なので、しょうがないことなのですが、3歳の子をひとりだけで病院に置いていくのは本当に心が痛みました。その時点ではどれくらいの入院になるのかは読めませんでしたが(結果的には10日間でした…)、不安要素が次から次へと頭に浮かんできます。「ひとりで着替えができるだろうか」「ひとりで歯磨きができるだろうか」「ひとりでトイレに行けるだろうか」「何より親がいなくて寂しくないだろうか」…あげればキリがないくらい不安だらけでした。そして、とうとうお別れの時間がやってきました。看護師さんが待合室まで迎えに来てくれました。上の病棟に親はいけません。ここでお別れです。しゃがんで息子の目線になり、「今から病気を治すために、入院するんだ。でもそこにはお父さんやお母さんは行けないんだ。絶対に治るから頑張るんだよ。また迎えにくるね。」そう言いながら、目から涙が次から次へと流れていきます。彼は静かに「うん。」と答えてくれました。看護師さんに抱っこされて、向こうの廊下へと向かっていきます。顔はこちらを向いていたので、号泣しながら彼に手を振り続けました。不安とそして決意のようなものが入り混じった顔で手を振り返す彼。その姿を見てまたもや涙が溢れ出します。まだ小さな子どもなのに、可愛いくて仕方がない我が子なのに、何もしてあげることのできない自分が悔しかったのです。一方、彼の目には涙はありませんでした。もちろん彼の心の中も不安でいっぱいだったに違いありません。ただ、それを表に出すことはありませんでした。いつもなら何かあるとすぐに泣くし、すこしの出来事に対してもクレームを言ってくる彼が、この困難な状況において泣き言ひとつ言わず、淡々と現実を受け入れて頑張っていたのです。

 幸い投薬が成功し、無事に退院できました。本当にほっとしましたが、改めて「子どもは外でこそ頑張るんだなあ」という気持ちを強くしました。彼のあのお別れの時の頑張りは「外」だからこそ発揮できたと思うのです。これは花まる教室で毎週頑張っている子どもたちにも同じことが言えます。家ではダラダラしてお母さんに怒られているかもしれませんが、教室では精一杯全力で頑張っているのです。その頑張りを成長につなげていけるように、これからもサポートさせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします!

 

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